Now Loading

生薬解説薄荷はっか

生薬解説 薄荷

薄荷 説明表示をクリック → 説明表示  いらっしゃいませ

中国における薬物の応用の歴史は非常に古く、独特の理論体系と応用形式をもつに至っており、現在では伝統的な使用薬物を「中薬」とよんでいます。

中薬では草根木皮といわれる植物薬が大多数を占めるところから、伝統的に薬物学のことを「本草学」と称しており、近年は「中薬学」と名づけています。

中薬学は、中薬の性味・帰経・効能・応用・炮製・基原などの知識と経験に関する一学科であり、中医学における治療の重要な手段のひとつとして不可分の構成部分をなしています。

【大分類】解表剤…発汗・発散を促す中薬です。
【中分類】辛涼解表薬…冷やしながら解表する中薬です。

キャッチコピー辛、冷

【中国読み】…BO HE

 概要

辛涼解表薬です。胃薬となります。

ハッカとは?

メントール(menthol):薄荷(ニホンハッカ)、ミント(ペパーミント)に多く含まれますよ!。 ハツカハ4εη伍aθrveηs∫sL.var.ρφe畑一80θηsMalinv.exHolmesはシソ科Labiataeの多年草で、やや湿った草地や溝の脇などに生え、地下茎を延ばして盛んに増えますね!。

茎の断面は正方形で高さは20~40cm、葉を対生します。

ハッカ 葉は葉柄があり、葉身は狭卵形~長楕円形で長さは2~8cm、巾は1~2.5cm、縁には鋸歯があります。

花は夏から秋に咲き、上部の葉腋に小さな花が集まって付きます。

花冠は長さ4~5mm、ごく薄い淡紅色薯は緑色で先は5.つに分かれ、それぞれの先端は尖っています。

雄しべは4本、雌しべは1本で、花後.薯の底部に4個の径が約0.7mmの球状の分果ができます。

植物全体に軟毛とハッカ油を含む腺毛が生えています。

日本の北海道から九州までと朝鮮半島、中国、シベリア、樺太に分布しています。

ハッカ油やメントールの原料として大規模に栽培されるほか、ハーブとして庭にも植えられます。

野外に自生しているものは多くは人里に近いところに見られますので、本来の野生か、栽培品の逸出か、判断に迷うことがあります。


 生薬生産地

中国地図 【中国産地】…江蘇省、崇明島、漸江省
【日本産地】…岡山、北海道から九州
【その他産地】…朝鮮半島、シベリア、樺太
日本産有



 伝統的薬能

【漢方における薬性と適用】
辛、冷(温とする意見もあります)。気剤として働き、風熱による表証を治し、頭痛日赤、咽頭の腫痛、痒み、心腹脹満、窪乱に応用します。

【古典の記載】
「新修本草」賊風刺、傷寒の発汗、悪気、心腹の脹満、雷乱、宿食の不消化、下気を主る。煮汁を服し、亦生食に耐える。人家にこれを種いて汁を飲む。汗を発し、大いに労乏巌2を解す。

「本草綱目」咽喉、口歯の諸病を利し、痩儘鰍珊、鼠落4、櫨瀞を治す。鷹いた汁で含漱すれば、舌胎※6 語渋を去る。葉を操んで鼻を塞げば咽血を止める。

【処方例】
加味迫遥散、響声破笛丸、荊芥連翻湯、荊防敗毒湯、柴胡清肝湯、滋陰至宝湯、清上防風湯、川菖茶調散、防風通聖散。 【用語解説】
※1 賊風…正常でない気候のこと。風邪または痛風のこと。
※2 労乏…疲れること。
※3 瘡折…湿疹。
※4 風癌…風疹。
※5 鷹癒…細かい赤い発疹。
※6 舌胎…舌が荒れること。

薬物の治療効果と密接に関係する薬性理論(四気五味・昇降浮沈・帰経・有毒と無毒・配合・禁忌)の柱となるのが次に掲げる「性・味・帰経」です。

【温寒】… 涼
※性:中薬はその性質によって「寒・涼・平・熱・温」に分かれます。例えぱ、患者の熱を抑える作用のある生薬の性は寒(涼)性であり、冷えの症状を改善する生薬の性は熱(温)性です。寒性涼性の生薬は体を冷やし、消炎・鎮静作用があり、熱性温性の生薬は体を温め、興奮作用があります。

生薬中薬)の性質と関連する病証
性質作用対象となる病証

寒/涼

熱を下げる。火邪を取り除く。毒素を取り除く。

熱証陽証陰虚証。

熱/温

体内を温める。寒邪を追い出す。陽を強める。

寒証陰証陽虚証。

熱を取り除き、内部を温める2つの作用をより穏やかに行う。

すべての病証。

 【補瀉】… 瀉  【潤燥】…  【升降】… 升  【散収】…
【帰経】…肺・肝
帰経とは中薬が身体のどの部位(臓腑経絡)に作用するかを示すものです。

【薬味】…辛・苦  まず肺に入ります。  次に心に入ります。
※味とは中薬の味覚のことで「辛・酸・甘・鹸・苦・淡」の6種類に分かれます。この上位5つの味は五臓(内臓)とも関連があり、次のような性質があります。
生薬中薬)の味と関連する病証
 味作用対象となる病証対象五臓

辛(辛味)

消散する/移動させる。体を温め、発散作用。

外証。風証。気滞証。血瘀証。

肺に作用。

酸(酸味)すっぱい。渋い。

縮小させる(収縮・固渋作用)。

虚に起因する発汗。虚に起因する出血。慢性的な下痢。尿失禁。

肝に作用。

甘(甘味)

補う。解毒する。軽減する。薬能の調整。緊張緩和・滋養強壮作用。

陰虚。陽虚。気虚。

脾に作用。

鹹(塩味)塩辛い。

軟化と排除。大腸を滑らかにする。しこりを和らげる軟化作用。

リンパ系その他のシステムが戦っているときの腫れ。

腎に作用。

苦(苦味)

上逆する気を戻す。湿邪を乾燥させる。気血の働きを活性化させる。熱をとって固める作用。

咳・嘔吐・停滞が原因の便秘。排尿障害。水湿証。肺気の停滞に起因する咳。血瘀証。

心に作用。

淡(淡味)

利尿。

水湿証。

【薬効】…発汗作用  清熱作用  駆風作用 

【薬理作用】…芳香性。中枢抑制作用、鎮痙・運動抑制作用、末梢血管拡張作用。

薬としての八ツカ(図10)

薄荷(ハッカ)MenthaeHerba(日本薬局方)(日局)薄荷(Bohe)MenthaeHaplocalycisHerba(中華人民共和国薬典)(薬典)

【基原】 ハツカハ4.ヨrぴθη8/sL.var.ρψθr∂80θη8Malinv.(日局)=M加ρわcaヶxBriq.(広義)(薬典)(シソ科Labiatae)の地上部。

【産地】 日本(岡山、北海道)、 中国(江蘇・漸江)。 【性状】 茎および対生する葉からなり、茎は淡褐色から赤紫色で細毛があります。断面は正方形。

葉は長楕円形で長さ2~8cm、巾1~2.5cm、両端が尖り、上面は淡黄褐色~淡緑黄色下面は淡緑色~淡黄緑色。葉をルーペ視すると両面に毛、腺鱗頭状毛をまばらに認めます。

特異な、翻屠蘇綴あり†口に\menthd

【成分】 :is切精油(/%内外)、mentho1(30~67%)、ノーmenthone、cam-phene、ノー1imonene、isomenthone、piperitone、pulegoneなど。フェニルプロパノイド:rosmarinicacid.

【薬理】 鎮痙作用:ハッカ油はマウスの遊離小腸に対して鎮痙作用を示しました。

鎮痛作用:50%メタノールエキスは経口投与でマウスの酢酸writhingを抑制しました。

有効成分はmenthoneでした。局所作用:ハッカ製剤は皮膚粘膜に使用すると冷覚受容体に作用して、清涼感を感じ、皮膚粘膜の血管を収縮しました。

mentholは冷覚受容体に作用してまず清涼感を感じ、その後軽度な刺激感があり、皮膚粘膜の血管の収縮と深部の血管の拡張を示しました。

mentholは清涼感を与えますが実際の皮膚粘膜の温度は低下していません。

ハッカ油は皮膚を刺激する作用があり、徐々に皮膚に浸透して長時間の充血を起こしました。

ハッカ油を外用すると神経末梢を麻癖させ、消炎、止痛、止痒作用を示しました。

肝保護作用:ハッカ注射液の皮下注射は四塩化炭素による肝障害に一定の保護作用がありました。

ハッカのアセトンエキスあるいは50%エタノールエキスのラットの十二指腸投与は利胆作用を示し、その主な有効成分はmentholでした。

心臓血管に対する作用:ハッカ油は分離したカエルの心臓に対して麻癖作用、血管拡張作用を示しました。

抗炎症作用:ハッカのエキスは腹腔内注射でラットのカラゲニンによる炎症を抑制しました。主要な有効成分はmentholでした。

【用途】…芳香性矯味、駆風薬として消化不良、心腹張満、頭痛、めまい、などに応用する。多くはハッカ油、ハッカ水の原料とする。

●日本薬局方
【出典】…新修本草
【三品分類(中国古代の分類)】… 神農本草経や名医別録などでの生薬分類法
中品(保健薬)


 生薬の画像

【基原(素材)】…シソ科ハッカまたはその変種の葉

図01:薄荷の植物図


図02:薄荷結晶(ハッカ脳)。6方結晶の光沢を持ち無色透明です。


図03:中国薄荷・太倉です。


図04:和種ハッカ・はくびです。


図05:薄荷の植物画像


図06:薄荷の花


図07:薄荷の生薬画像








ツムラ漢方薬一覧へ

 方剤リンク

本中薬(薄荷)を使用している方剤へのリンクは次のとおりです。関連リンク


  関連処方加味逍遙散 »
  関連処方荊芥連翹湯 »
  関連処方柴胡清肝湯 »
  関連処方滋陰至宝湯 »
  関連処方川芎茶調散 »
  関連処方清上防風湯 »
  関連処方防風通聖散 »


生薬 生薬は、薬草を現代医学により分析し、効果があると確認された有効成分を利用する薬です。 生薬のほとんどは「日本薬局方」に薬として載せられているので、医師が保険のきく薬として処方する場合もあります。


中薬・中成薬 中薬は、本場中国における漢方薬の呼び名です。薬草単体で使用するときを中薬、複数組み合わせるときは、方剤と呼び分けることもあります。
本来中薬は、患者個人の証に合わせて成分を調整して作るものですが、方剤の処方を前もって作成した錠剤や液剤が数多く発売されています。これらは、中成薬と呼ばれています。 従って、中国の中成薬と日本の漢方エキス剤は、ほぼ同様な医薬品といえます。


 詳細

ハッカの仲間

ハッカ属Mθ加加spp.は世界に約30種があり、南半球に数種が生育するほかは大部分は北半球に見られます。

いずれも茎の断面は正方形、葉は対生、植物体に精油を含み、芳香があります。

花は唇形、花冠の色は白から淡紅色です。

ハッカ以外にもハーブ、精油原料として重要なものがいくつかありますが、ひとつの種の中に成分の種類や量の違う変異株が多く、しかも根茎で増えるので、変異株を増殖することも容易です。

そのために、たとえばハッカという1種でも種々の成分変異株(ケモタイプ)が存在します。

その上、種間で雑種を作りやすく、分類がなかなか厄介です。

ここでは日本に自生、あるいは外国から帰化して野生化しているハッカ属植物を紹介します。

帰化しているハッカ属植物はもともとハーブとして導入したものが逃げ出して増えたものなので、ハーブ、精油原料として有名なものばかりです。

日本にいて有名なハッカ属植物がほぼ全部見られます。

以下に日本に見られるハッカ属植物を区別する検索表とそれぞれの植物を記しました。

ハッカ属植物はひとつの植物に和名がいくつかあり、また、英名も一般に使われているのでそれらについても記しました。

日本に見られるハッカ属植物の検索表

A花は茎の上部の芭葉(花の下にある葉)の腋に集まって付きますが、上下の芭葉の間隔が離れているために、花の集団も離れています。

B庖葉は通常の葉と形も大きさもあまり変わりません。

よく果実ができます。C葉は目立たない鋸歯があるか全縁。薯筒の内面に密に長い毛があります。

(3) C葉は明らかな鋸歯があります。薯筒の内面に長毛はありません。D讐の先は狭い三角形で、先は細く尖っています。

(1)D薯の先は正三角形で、先は細くなりません。

(4)B芭葉は通常の葉に比べて明らかに小さく、普通は果実ができません。C芭葉は卵形~卵状披針形で鋭尖頭。

(5)C庖葉は披針形~線形。

(6)A上下の芭葉の間隔が狭いために、花の集団は連続し、穂状になるか枝先に集まって付きます。B花は穂状に付きます。C全株ほとんど無毛です。

(7)C全株に毛を密生します。D葉は長楕円状披針形で、葉面にしわはありません。

(8)D葉は楕円形~円形で、葉面は葉脈に沿って凹み、細かいしわがあります。

(9)B花は枝先に集まって付きます。全株無毛です。

(2)

日本に見られるハッカ属植物

自生するもの (1)ハッカ英名:Japanesepeppermintハ4.oθηθゴθηs/8L、=ハ4、θrソθηs∫8L.var.ρψθ畑soθηsMalinv.exHolmes日本薬局方は二番目の学名を使っています(図3)。

(2)ヒメハッカMノ叩o加θ(Miq)Makino葉は長さが2cm以下で鋸歯が無く、全体にほとんど毛がありません。

北海道、本州の湿地に生えていますが、絶滅が心配されているまれな植物です。

日本に帰化しているもの

(3)メグサハッカ英名:Pennnyroyalmintハ4ρ口jθg'口mL.ヨーロッパ原産。葉は楕円形~長楕円形で小さい。花は茎の上部の葉腋に集まって付き、花の集団は互いに離れていて、茎に団子を並べたように付いています(図4)。

(4)ヨウシュハッカ,セイヨウハッカ英名:Fieldm圭ntM∂ルθη曲L.subsp.aπ飢8∠sヨーロッパ,北アメリカなど、北半球に広く分布。ハッカに似ていますが葉に円みがあり、全体に毛が多いです。

(5)アメリカハッカ英名:Gingermint、Red-mintM.xgθη磁8L.=M.x8沼o血8Soleオランダハッカとヨウシュハッカの雑種。

(6)セイヨウハッカ、コショウハッカ英名:PeppermintM.xρψθが伯L.ヨーロッパ原産でハーブ、精油原料として栽培。オランダハッカとヌマハッカM.ヨg口∂伽∂L.との雑種。メントールを含み、強いハッカ臭があります。ハッカに似ていますが花は茎頂に穂になって付きます(図5)。

(7)ミドリハッカ、オランダハッカ英名:SpearmintMsかo砿ヨL.=M.佐r価s(L.)L.ヨーロッパ原産。全体に毛が少なく、葉は葉柄が無く基部は心臓形。表面はちりめん状のしわがあります。花は茎頂に穂になりて付きます。精油はプレゴンを主成分とし、ハッカのメントール臭とは異なります(図6)。特に毛が少なく、葉の縁が大きく波打ち、花序の細長いものをオランダハッカM.印加曲L.var.crispaBenth.としてミドリハッカM印加狛L.と区別をすることがあります。

(8)ナガバハッカ、ケハッカ英名:HorsemintM、ノ伽伊あ伽(L.)Huds.ユーラシア原産。全体に白毛が多い。

(9)マルバハッカ英名:Round-leavedmint、ApplemintMs口∂γθoノθηsEhrh.=M伽㎜φあ〃∂(L)Huds.(誤用この学名の植物は本種とナガバハッカとの雑種と考えられます)ヨーロッパ原産。葉は無柄で、葉身は広楕円形で、著しく縮み、白毛が多い。花は茎頂に穂になって付きます。

詳細

腺毛(図7)

ハッカに限らず、シソ科のほとんどの植物は精油を含み、香りがあります。

これは植物体の表面に腺毛があるためです。腺毛は表皮細胞からできた袋状の毛で、中に精油を含んでいます。丸くて毛のイメージからほど遠い、ですが、植物学では表皮細胞が外側に飛び出したものを、形のいかんにかかわらず、毛と呼びます。

植物の精油の蓄え方はいろいろで、桂皮の様なクスノキ科植物は油細胞に、ミカン科植物は肉眼で淡黄色の点に見える油室に蓄えます。

シソ科は植物体の表面特に葉の両面に分布している腺毛に蓄えています。

そのために葉を擦るとよい匂いがします。料理の時、板前さんがアオジソを手のひらで叩いて、料理に添えるのは腺毛をつぶして、匂いを出すためです。

シソ科のハーブも使う前にたたくと香りが強くなります。ハッカの腺毛には2種類あって大きな丸い粒は腺鱗と言い、小さ、なものは頭状毛と言います。

腺鱗はハッカの葉をルーペで見ると光った点々として見えます。

ペパーミントオイルと日本のハッカ油

セイヨウハッカから水蒸気蒸留で得た精油をペパーミントオイルと言います。

現在、350種の精油成分が明らかになっています。主な成分は(r)一メントール(30~50%)、(一)一メントン(15~30%)で、ペパーミント特有の鋭い、クールな香りの原因になっています。これ以外のメントフラン、メントールのエステル類、セスキテルペンなどが、甘い、まろやかな香りを作り出しています。

ところが日本のハッカの精油成分はかなり異なります。日本のハッカを水蒸気蒸留して得た精油を取卸油と言いますが、その50~80%が(一)一メントールです。

これを冷却すると(一)一メントールが結晶として析出します。と言うことでハッカはメントール原料に向いています。

この結晶を除いた精油をもう一度水蒸気蒸留して精製したものがハッカ油です。ハッカ油は(一)一メントールを30~40%含み、その他、メントン、α一ピネン、カンフェン、メンテノンなどを含んでいます。

そのために、鋭いクールな香りはありますが、味も香りもペパーミントオイルよりも落ちます。

それはまろやかな香りを与えるメントフランを含まず、ピペリトン、プレゴンなどの苦い成分を含むためです(図8)。

世界の取卸油生産の大部分を占めた北海道・北見地方

ハッカは江戸時代後期に岡山、広島で栽培が始まり、やがて山形でも栽培されるようになりました。

北海道の北見地方でハッカの栽培が始まったのは明治20年代でした。会津出身の渡部清司が山形由来の株を入手して湧別で栽培し、明治29年に約350gのハッカ油を得ています。

明治36年には現在の北見市の中にあった野付牛で屯田兵として入植した伊東兄弟が取卸油約55kgを生産しました。

その代価は同じ面積に栽培する作物の6~10倍にもなるため、近隣の農家もハッカを栽培するようになり、北見地方はたちまちハッカの大産地になりました。

昭和8年には取卸油の大規模な生産工場ができ、昭和13年にはこの工場で世界の70%の取卸油が生産されるまでになりました。

しかしその後、戦争による食用作物への転換で衰退し、第二次大戦後再び生産が拡大しましたが、中国やブラジルからの安価な製品との競合と合成メントールの登場で、ついに昭和58年に工場は閉鎖されることになりました。

現在、北見市にはハッカ記念館と薄荷蒸留館があり、往時をしのぶことができます。

メントールの立体構造

メントールCmH2。Oは六員環(シクロヘキサン環)にメチル基、イソプロピル基、水酸基が置換した化合物です。

これらの置換基が付いた3つの炭素は不斉炭素になるために23価すなわち8個の立体異性体があります。

図9の4つの異性体とその対掌体です。このうち∫一メントール(=(一)一メントール)は置換基がすべてエクアトーリアルという立体障害の小さい配列になっていて極めて安定です。

ハッカ油のメントールはほとんど∫メントールですが、次に安定なネオメントールも少量含まれています。

これらの立体異性体は図に示したように、匂いが違うそうです。

チモール、メントン、ピペリトン、プレゴンを還元するとゴ体とノ体の1:1の混合物すなわち出rメントール(=(±)一メントール)ができます。φ体は天然にはなく、匂いはA体の0.3倍以下、皮膚に対する清涼感も1/10以下で、持続性もありません。


 備考

中国唐代の医学全書千金方(せんきんほう)(623年)に薄荷が薬草として記録されています。


ハッカの香りとは?

ハッカパイプ仕出し ハッカの匂いは小さい時から、いろいろな機会に嗅いできました。

お祭りの縁日に行くとハッカパイプというのを売っていました。

ハッカパイプ セルロイドでできた煙草のパイプに似た容器にハッカで香りを付けた砂糖が入っていて、強く吸うと砂糖が口の中に飛び込んできて甘い味とハッカ独特の清涼感があります。

ドロップにも色々な果物の香りの中にハッカの香りのものが混ざっていました。

他のドロップは半透明なのにハッカのドロップは白く不透明でした。

ちょっと苦みがあってむしろ嫌いだったようです。

チューインガムはもちろん、ハッカ飴、三角形の砂糖の塊のハッカ糖ハッカ味のチョコレート、アイスクリーム、肩凝りの貼薬やメンソレータム、仁丹、胃腸薬、タバコにもハッカが使われています。


生薬陳列

 生薬の書物の歴史

1.【神農本草経】(西暦112年)
中医薬学の基礎となった書物です。植物薬252種、動物薬67種、鉱物薬46種の合計365種に関する効能と使用方法が記載されています。
神農本草経

神農神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂 »に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。



2.【本草経集注】(西暦500年頃)
斉代の500年頃に著された陶弘景(とうこうけい)の『本草経集注(しっちゅう)』です。掲載する生薬の数は、『神農本草経』(112年)の2倍に増えました。 本草経集注(しっちゅう)
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)

陶弘景(456~536年)は、中国南北朝時代(420~589年)の文人、思想家、医学者です。江蘇省句容県の人です。茅山という山中に隠棲し、陰陽五行、山川地理、天文気象にも精通しており、国の吉凶や、祭祀、討伐などの大事が起こると、朝廷が人を遣わして陶弘景に教えを請いました。
そのために山中宰相と呼ばれました。庭に松を植える風習は陶弘景からはじまり、松風の音をこよなく愛したものも陶弘景が最初です。
風が吹くと喜び勇んで庭に下り立ち、松風の音に耳をかたむける陶弘景の姿はまさに仙人として人々の目に映ったことでしょう。



3.【本草項目】(西暦1578年)
30年近い歳月を費やして明代の1578年に完成された李時珍(りじちん)の『本草項目』です。掲載する生薬の数は、約1900種に増えました。
『本草綱目』は、1590年代に金陵(南京)で出版され、その後も版を重ねました。わが国でも、徳川家康が愛読したほか、薬物学の基本文献として尊重され、小野蘭山陵『本草綱目啓蒙』など多くの注釈書、研究書が著されています。
本草綱目は日本などの周辺諸国のみならず、ラテン語などのヨーロッパ語にも訳されて、世界の博物学・本草学に大きな影響を与えています。
本草項目
儒者・林羅山(1583~1657年)の旧蔵書

李時珍 李時珍(1518~1593年)は、中国明時代(1368~1644年)の中国・明の医師で本草学者。中国本草学の集大成とも呼ぶべき『本草綱目』や奇経や脉診の解説書である『瀕湖脉学』、『奇経八脉考』を著した。
湖北省圻春県圻州鎮の医家の生まれです。科挙の郷試に失敗し、家にあって古来の漢方薬学書を研究しました。30歳頃からあきたらくなって各地を旅行し調査したり文献を集めたりはじめます。ついに自分の研究成果や新しい分類法を加え、30年の間に3度書き改めて、1578年<万暦6年>『本草綱目』を著して、中国本草学を確立させました。
関連処方李時珍、生家にて »



4.【中医臨床のための中薬学】(西暦1992年)
現在、私が使用している本草の辞典です。生薬の記載個数は、約2,700種に増えました。
神戸中医学研究会の編著です。
中医臨床のための中薬学


区切り
ハル薬局

【薬用部分】…葉

 成分

l-menthol, menthone, menthofuran


道教・八卦 人参

薄荷の植物画像

TOP