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生薬解説忍冬にんどう

生薬解説 忍冬

忍冬 説明表示をクリック → 説明表示  いらっしゃいませ

中国における薬物の応用の歴史は非常に古く、独特の理論体系と応用形式をもつに至っており、現在では伝統的な使用薬物を「中薬」とよんでいます。

中薬では草根木皮といわれる植物薬が大多数を占めるところから、伝統的に薬物学のことを「本草学」と称しており、近年は「中薬学」と名づけています。

中薬学は、中薬の性味・帰経・効能・応用・炮製・基原などの知識と経験に関する一学科であり、中医学における治療の重要な手段のひとつとして不可分の構成部分をなしています。

【大分類】清熱剤…熱を除去する中薬です。
【中分類】清熱解毒薬…熱毒を解毒除去する中薬です。

【別名】…耐冬

 概要

忍冬と金銀花は、同一種のスイカズラですが、忍冬は【葉】で、金銀花は【つぼみ】です。 中国の中医学では、別の種類としています。

化膿症・アレルギー症の緩和・解毒を行います。

●スイカズラ

Lonicera japonica Thunb.(スイカズラ科Caprifoliaceae)は野山の藪のふちや田畑の周りの低木に絡んで、普通に見られるつる性の木本植物です。半常緑植物で、暖地では葉の一部が越冬します。葉は対生し、卵形から長楕円形で長さは2.5~8cm、巾は0.7~4cmで、先は円いかやや鋭頭で、基部は円形です。

縁は全縁ですが、痩せた小さな株の葉図2スイカズラの花はしばしば両縁が羽状に切れ込みます。葉柄は長さ3~8mmです。葉の両面、特に下面に毛が多く、葉柄、茎にも毛が生えています。花は5~7月に咲き、枝先の節に2個ずつ付きます。

筒状で先は広がって上下の2唇に分かれ、長さは2.5~3.5cm、上唇は浅く4裂しています。

花ははじめ白色でときに淡紅色を帯び、後に黄色になります。そのために花の咲いた株を見ると白い花と黄色い花が混ざっています。雌しべは1本、雄しべは5本で花冠の外に飛び出しています。花筒の底には蜜が溜まっています。

花には良い香りがあり、特に夜に強く香ります。子房下位で薯裂片の下が膨れています。秋にはこの部分が膨れて径が5~7mmの黒色で光沢のある球形の液果になります(図3)。

北海道南部から本州、四国九州に分布し、朝鮮半島、中国にも生育しています。

●スイカズラ科

スイカズラ科は多くは木本で、葉は対生、花は子房下位で、雄しべの数は花冠裂片の数と同じ、多くは花冠の基部の内側に蜜腺があるなどの特徴があります。

主として北半球の温帯から熱帯に分布し、世界に14属、約450種が生育しています。日本には8属55種が野生しており、木ではスイカズラ属のほかに、ニワトコ属、ガマズミ属、ツクバネウツギ属タニウツギ属、草ではリンネソウ属、ツキヌキソウ属などが見られます。

ところが最近のDNAを用いた分類ではスイカズラ科は再編成され、ニワトコ属、ガマズミ属はレンプクソウ科に移り、残りの属はマツムシソウ科、オミナエシ科の植物とともに、大きなスイカズラ科を構成しています。

●スイカズラの仲間-ヒョウタンボク類

スイカズラ属は世界に約200種が生育し、中国には多く、98種が見られます(図4)。日本には21種が生育していますが、日本中に広く分布しているのはスイカズラだけで、それに準ずるのはウグイスカグラ L. gracilpes Miq. var. glabra Miq.の仲間で、その他のものは一部の地方だけに生育しています。

これはその昔、広く生えていたものが気候の変動等で生育地が減り、狭い範囲に生き残ったものと考えられます。このうちスイカズラとその近縁種3種だけがつる性で、他は直立する木です。 花は先が広がった筒形で、スイカズラのように上下の2唇に分かれ上唇が4裂するものと、キンギンボクLmoπo冊γA.Grayのようにほぼ同大の5個の裂片になり、放射状に広がるものとがあります。果実の形も3種類あります。すなわち、スイカズラの仲間は花梗に花が1個付く場合と2個付く場合があり、後者は果実も2個できますが、この2個が団子のように相接して並ぶもの、果実の一部が融合して全体でひょうたん形をなすものがあります(図5)。

スイカズラ属に○○ヒョウタンボクと呼ばれる植物が多いのはこの果実の形に由来しています。また、日本には園芸植物として外国から導入したものも植えられています。その代表は北アメリカ東部原産のツキヌキニンドウ L. sempervirens L.(図6)です。

6~8月に茎の先に燈黄色~深紅色の花を群生するつる性の植物です。花の直下の一対の葉が基部で融合して1枚の楕円形の葉になり、茎がその中央を貫いているためにツキヌキニンドウの名が付きました。また、最近アカバナヒョウタンボク(図7)がかなり一般化をしています。これについては後に詳しく書きます。


 生薬生産地

中国地図 日本産有



 伝統的薬能

薬としてのスイカズラ(図8、9)

忍冬藤(Rendongteng) Lonicerae Japoni-cae Caulis (中華人民共和国薬典)

忍冬(ニンドウ) Lonicerae Fdium cum Caulis (日本薬局方)

金銀花(Jinyinhua) Lonicerae Japonicae

円os(中華人民共和国薬典) 金銀花(キンギンカ) Lonicerae Flos (日本薬局方外生薬規格)

【基原】
スイカズラ Lonicera japonica Thunb.(スイカズラ科Caprifoliaceae)の茎枝(忍冬藤)、葉と茎(忍冬)、つぼみ(金銀花)。

日本では忍冬として葉を重視しますが、中国の忍冬藤は葉を除いた生薬です。

【産地】
忍冬藤:中国(漸江(産量最大)、四川、江蘇(銀花藤の名のものが品質最高)、河南、陳西山東、広西湖南など)。日本(四国、宮崎)。

金銀花:中国(河南(南密県産の密銀花が品質最良とされる)、山東(東銀花、済銀花など。生産量が多い)など)。

【性状】
忍冬藤:直径が1.5~6mmの長い円柱形の茎で分枝が多いです。通常は丸めて束ねてあります。表面は赤褐色から暗褐色で、無毛か毛に被われ、外皮は剥けやすいです。茎には節が多く、節には葉の付いた跡と残った葉が見られます。折れ易く、茎の断面は中空です。老茎にはわずかに苦味があります。

忍冬:葉及び短い茎に対生する葉。葉は長さ3~7cm、巾は1~3mmの楕円形で、先は円頭からやや鋭頭、基部は円形、上面は緑褐色下面は淡灰褐色で、長さ3~8mmの葉柄があります。葉の両面には軟毛が生えています。茎は径が1~4mm、外面は灰黄褐色から帯紫褐色で黄断面は円形、中空です。味は収敏性で後にわずかに苦いです。

金銀花:上部が膨れた棒状でわずかに湾曲しています。長さは2~3cm、上部の径は3mm以下、下部の径は1.5mm。表面黄白色から緑白色、柔毛で密に被われています。薯は緑色で先端は5裂し、裂片は長さ2mm、有毛です。開花したものは花冠の先が二唇形を呈し、黄色の雄しべが5本と、1本の雌しべが見られます。特異な匂いがあり味はわずかに渋くて甘いです。

【成分】
忍冬藤

フェノール酸:chlorogenicacid、isochlo-rogenicacid、protocatechuicacid、caffeicacid、vanillicacidなど。イリドイド配糖体:loganin、vogelosideなど。ヘデラゲニン、オレアノール酸をゲニンとする配糖体(サポニン):極めて多数。フラボノイド:luteolinとその配糖体、1onicera且avoneとその配糖体。

忍冬

フェノール酸:chlorogenicacid、isochlorogenicacid、両者合わせて2.5%(茎の2.5倍)、caffeicacid、vanillicacidなど。フラボノィド:luteolinとその配糖体、lonicera且avoneとその配糖体。

金銀花

フェノール酸: chlorogenicacid、isochlo-rogenic acid 両者合わせて約6%、protocat-echuicacid、caffeicacid、vanillicacid。フラボノイド:luteolinとその配糖体。ステロイド:β一sitosterol、stigmasterolとそのglucoside。精油成分:丘nalool、`r伽ε々ヨロs-fameso1、α一terpineol、geraniol、benzylbenzoate、ds-linalooloxide、jasminlactone、伽一jasmone、伽一3-hexenol、eugenol、carvacrolなど。

【薬理】
金銀花についての報告は多数ありますが、忍冬藤・忍冬の報告は少ないです。また、薬理活性成分の多くは chlorogenic acid などのフェノール酸、luteorin などのフラボノイドなので、ここでは金銀花についての最近の研究を紹介します。

抗菌・抗ウイルス作用:

金銀花は広い抗菌スペクトルを持っており、黄色ブドウ球菌皮膚ブドウ球菌、A群溶血連鎖球菌B群溶血連鎖球菌大腸菌、枯草菌ピロリ菌に抗菌作用を示しました。またヒト単純庖疹ウイルス、モルモットのサイトメガロウイルス、鳥のAIVインフルエンザウイルスにも同様の抑制作用を示しました。また、エタノールエキス、水エキス、水の超音波抽出エキスは新生児の培養腎細胞のアデノウイルス抵抗性を増強しました。

抗炎症作用:
金銀花はアルブミン、カラゲニンによるラットの足瞭浮腫、ラットのクロトン油による肉芽腫の増殖と炎症性溶出を抑制し、水エキスは卵白に過敏なマウスの小腸柔毛の炎症を緩解し、IL-4の量を下げました。

抗血小板凝集作用:
水エキスは血"伽でアデノシンニリン酸による血小板の凝集に拮抗しました。その有効成分はクロロゲン酸イソクロロロゲン酸、カフェ酸などのフェノール酸でした。

免疫調節作用:
主要成分のクロロゲン酸は丁細胞の活性化に関与しているカルシニューリンを活性化し、∠ηγルo、∠η7伽oでマクロファージの呑食能を高めました。金銀花そのものも牛の血液や牛乳中の黄色ブドウ球菌に対する中性球の呑食能を高めました。

降脂血作用:
煎液の内服で小腸内のコレステロールのレベルを下げました。

【漢方における薬性と適用】
金銀花、忍冬、忍冬藤の効能はほぼ同じですので、以下に共通することを書きます。甘、寒で気剤として働きます。清熱解毒の項があり、熱毒による咽喉の腫れや痔痛、雛壇、種々の腫れ物下痢、血便に応用します。

【古典の記載】
「名医別録」忍冬。寒熱身腫を主る。「本草拾遺」忍冬。熱毒血痢水痢を主る。「本草綱目」忍冬。一切の風湿気、および諸腫毒、癌疽癖癬、楊梅悪瘡熱を散じ、毒を解す。「演南本草」金銀花。熱を清し、諸瘡擁疽の背に発するもの、無名の腫毒、丹瘤、療櫨を解す。

【処方例】
忍冬:治頭瘡一方

金銀花:銀麺散、銀花解毒湯、荊防敗毒散

薬物の治療効果と密接に関係する薬性理論(四気五味・昇降浮沈・帰経・有毒と無毒・配合・禁忌)の柱となるのが次に掲げる「性・味・帰経」です。

【温寒】… 寒
※性:中薬はその性質によって「寒・涼・平・熱・温」に分かれます。例えぱ、患者の熱を抑える作用のある生薬の性は寒(涼)性であり、冷えの症状を改善する生薬の性は熱(温)性です。寒性涼性の生薬は体を冷やし、消炎・鎮静作用があり、熱性温性の生薬は体を温め、興奮作用があります。

生薬中薬)の性質と関連する病証
性質作用対象となる病証

寒/涼

熱を下げる。火邪を取り除く。毒素を取り除く。

熱証陽証陰虚証。

熱/温

体内を温める。寒邪を追い出す。陽を強める。

寒証陰証陽虚証。

熱を取り除き、内部を温める2つの作用をより穏やかに行う。

すべての病証。

 【補瀉】… 瀉  【潤燥】…  【升降】… 降  【散収】…
【帰経】…心・肺
帰経とは中薬が身体のどの部位(臓腑経絡)に作用するかを示すものです。

【薬味】…苦  まず心に入ります。
※味とは中薬の味覚のことで「辛・酸・甘・鹸・苦・淡」の6種類に分かれます。この上位5つの味は五臓(内臓)とも関連があり、次のような性質があります。
生薬中薬)の味と関連する病証
 味作用対象となる病証対象五臓

辛(辛味)

消散する/移動させる。体を温め、発散作用。

外証。風証。気滞証。血瘀証。

肺に作用。

酸(酸味)すっぱい。渋い。

縮小させる(収縮・固渋作用)。

虚に起因する発汗。虚に起因する出血。慢性的な下痢。尿失禁。

肝に作用。

甘(甘味)

補う。解毒する。軽減する。薬能の調整。緊張緩和・滋養強壮作用。

陰虚。陽虚。気虚。

脾に作用。

鹹(塩味)塩辛い。

軟化と排除。大腸を滑らかにする。しこりを和らげる軟化作用。

リンパ系その他のシステムが戦っているときの腫れ。

腎に作用。

苦(苦味)

上逆する気を戻す。湿邪を乾燥させる。気血の働きを活性化させる。熱をとって固める作用。

咳・嘔吐・停滞が原因の便秘。排尿障害。水湿証。肺気の停滞に起因する咳。血瘀証。

心に作用。

淡(淡味)

利尿。

水湿証。

【薬効】…利尿作用  解毒作用  諸化膿疾患作用 

【薬理作用】…脂質代謝改善作用。

【用途】…解熱、解毒、利尿、消炎薬として腫物、痔、淋疾、小便不利、きのこ中毒などに民間的に用いる。腫物や痔には濃い煎液を外用しても良い。その他、筋骨疼痛にも用いる。

●日本薬局方
【出典】…名医別録
【三品分類(中国古代の分類)】… 神農本草経や名医別録などでの生薬分類法
上品(不老長生薬)


 生薬の画像

【基原(素材)】…スイカズラ科スイカズラの葉です。

図01:忍冬の植物全体画像


図02:忍冬の植物画像


図03:忍冬の生薬


図11:スイカズラの花


図12:スイカズラの果実



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 方剤リンク

本中薬(忍冬)を使用している方剤へのリンクは次のとおりです。関連リンク


  関連処方治頭瘡一方 »


生薬 生薬は、薬草を現代医学により分析し、効果があると確認された有効成分を利用する薬です。 生薬のほとんどは「日本薬局方」に薬として載せられているので、医師が保険のきく薬として処方する場合もあります。


中薬・中成薬 中薬は、本場中国における漢方薬の呼び名です。薬草単体で使用するときを中薬、複数組み合わせるときは、方剤と呼び分けることもあります。
本来中薬は、患者個人の証に合わせて成分を調整して作るものですが、方剤の処方を前もって作成した錠剤や液剤が数多く発売されています。これらは、中成薬と呼ばれています。 従って、中国の中成薬と日本の漢方エキス剤は、ほぼ同様な医薬品といえます。


 詳細

●ヒョウタンボクの果実は毒か

スイカズラ属の植物の中には果実が食べられるものがいくつかあります。東京の郊外の雑木林や奥多摩に見られるウグイスカグラの果実はグミの実のような形をして透き通るようなルビー色です。多汁でほとんど甘みはありませんが食べられます。

また、北海道の湿地に生えるケヨノミ L.caerulea L.subsp. edulis(Turcz.)Hulten、クロミノウグイスカグラ L. caerulea L.subsp. edulis(Turcz.)Hulten var. emphyllocalyx (Maxim.) Nakai の果実は粉白を帯びた青黒色に熟し、ブルーベリーと似た味で食べられます。後者はアイヌ名のハスカップの名で知られ、ジャムなどが作られています。

一方でキンギンボクやヒョウタンボクの仲間の果実は有毒で有名です。どの本にも有毒と書いてありますし、欧米の本にも同じようなことが書いてあるので、事実のようです。

北海道にはネムロブシダマ L. chrysantha Turcz.という恐ろしい名前のヒョウタンボクの仲間が生えています。ブシ(附子)は猛毒なトリカブトのことで、ダマは球形の果実を示します。すなわち、この和名は根室に生えているトリカブトの様に有毒な丸い果実を持つ植物という意味です。

しかし、これを食べて中毒をしたという話は知りません。その他のヒョウタンボクの仲間についても中毒事故の実例の報告は私の資料からは見つかりませんでしたが、子供が大量に食べると吐き気と下痢を起こすようです。有毒成分の報告も全く見つかりません。

サポニンが含まれている可能性があり、それによる消化管粘膜の刺激が考えられます。なお、1968年にアメリカで出版された医家向けの有毒植物の本(Lampe,K.et al., Plant Toxicity and Dermatitis: A Manual for Physicians)にスイカズラの毒性が書いてあります。

それには「果実を食べるとすぐに激しい吐き気、下痢、腹痛、瞳孔散大、冷や汗、心拍数の増大、四肢の引き量りがおこり、続いて痙璽、呼吸困難昏睡を起こして死に至る。死を免れた場合は通常3日かそれ以上かかって回復すると書かれています。これこそトリカブト並みの毒性です。本当でしょうか。日本ではそんな話は聞いたことはありませんし、誰もそんなに猛毒とは思っていません。少々大げさとは思うのですが、だからと言って自分で食べて確かめる気も起りません。

●名前について

スイカズラは花に蜜があり、花筒を引きちぎって蜜を吸うことから付いた名前です。カズラはつる性植物を意味します。

中国では植物を忍冬.花を金銀花といいます。忍冬は葉が冬を耐えて付いていることからの名前で、「名医別録」にはじめてこの名が登場します。日本でもこれをニンドウと音読みしてスイカズラの別名にしています。金銀花は黄色と白の花が混ざって咲くことから付いた名前です。

●アカバナヒョウタンボクとベニバナヒョウタンボク

図7の植物は Lonicera tatarica L. です。高さ3mになる落葉低木で、ロシアのヨーロッパ側からシベリアまで、および中国の新疆北部に自生し、園芸植物として栽培もされています。

花は5~6月に開花します。二唇形ですが、上唇が4つに深く切れ込んで、5弁の花のように見えます。花の色は白、淡紅紅などです。果実は球形で径が5~6mm、7~8月に紅色に熟します。最近、日本でもかなり出回るようになりました。

和名はアカバナヒョウタンボクのようです。ところがこれをベニバナヒョウタンボクと呼ぶ人がいて、混乱が起こっています。インターネットでベニバナヒョウタンボクの画像を検索すると図7の植物の写真とともに学名 Lonicera maximowiczii var.sacharinensis, 北海道に自生と解説した記事が沢山出てきます。

これは大きな間違いで図の植物をベニバナヒョウタンボクと思った人が植物図鑑などでこの和名の植物の図や解説と比較せずに学名や産地を写し取ったためです。本物のベニバナヒョウタンボクの花は紅色ですが、スイカズラの花を寸詰まりにしたような形をした小さい花で、全くの別物です。

インターネットではさらにこの間違った情報を安易に孫引きする人がいて、間違いが増殖したようです。

●スイカズラの匂いとスイカズラ茶

スイカズラの花にはジャスミンに似た素晴らしい匂いがあります。匂いの成分はリナロール、リナリールオキサイド、ジャスミンラクトン、o/s一ジャスモン、伽一3一ヘキセノールなどです。この花から精油を取るには含量が少ないために水蒸気蒸留法を使わず、花を石油エーテルで抽出して濃縮後、濃縮物をエタノールで抽出してコンクリートを得ます。

しかし生産はほとんど行われておらず、一般に使われるスイカズラの香は各種の香料素材を組み合わせた調合香料です。スイカズラの匂いを楽しむなら、スイカズラ茶があります。よく乾いた烏龍茶、紅茶の中に咲きたてのスイカズラの花を混ぜて、しばらく放置して、スイカズラの匂いを烏龍茶、紅茶に移します。

●スイカズラは温病の薬

後述するスイカズラ由来の生薬、金銀花、忍冬、忍冬藤はほぼ同じ薬能を持っています。李時珍は「本草綱引に"スイカズラは茎、葉、花の効用は皆同じ"と書いています。これらの生薬は温病、すなわち暑さ(熱)が原因でおこる病気の薬です。傷環論では病気は寒さが原因で起こると考えていますが、夏風邪のようにそれでは説明がつかない病気があります。

このようなものは熱が原因になっているものと考えて温病といいます。温病の考え方は清朝の頃に発展しました。中医学ではこの考え方を採用していますが、日本の漢方ではあまり関心がもたれていません。


生薬陳列

 生薬の書物の歴史

1.【神農本草経】(西暦112年)
中医薬学の基礎となった書物です。植物薬252種、動物薬67種、鉱物薬46種の合計365種に関する効能と使用方法が記載されています。
神農本草経

神農神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂 »に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。



2.【本草経集注】(西暦500年頃)
斉代の500年頃に著された陶弘景(とうこうけい)の『本草経集注(しっちゅう)』です。掲載する生薬の数は、『神農本草経』(112年)の2倍に増えました。 本草経集注(しっちゅう)
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)

陶弘景(456~536年)は、中国南北朝時代(420~589年)の文人、思想家、医学者です。江蘇省句容県の人です。茅山という山中に隠棲し、陰陽五行、山川地理、天文気象にも精通しており、国の吉凶や、祭祀、討伐などの大事が起こると、朝廷が人を遣わして陶弘景に教えを請いました。
そのために山中宰相と呼ばれました。庭に松を植える風習は陶弘景からはじまり、松風の音をこよなく愛したものも陶弘景が最初です。
風が吹くと喜び勇んで庭に下り立ち、松風の音に耳をかたむける陶弘景の姿はまさに仙人として人々の目に映ったことでしょう。



3.【本草項目】(西暦1578年)
30年近い歳月を費やして明代の1578年に完成された李時珍(りじちん)の『本草項目』です。掲載する生薬の数は、約1900種に増えました。
『本草綱目』は、1590年代に金陵(南京)で出版され、その後も版を重ねました。わが国でも、徳川家康が愛読したほか、薬物学の基本文献として尊重され、小野蘭山陵『本草綱目啓蒙』など多くの注釈書、研究書が著されています。
本草綱目は日本などの周辺諸国のみならず、ラテン語などのヨーロッパ語にも訳されて、世界の博物学・本草学に大きな影響を与えています。
本草項目
儒者・林羅山(1583~1657年)の旧蔵書

李時珍 李時珍(1518~1593年)は、中国明時代(1368~1644年)の中国・明の医師で本草学者。中国本草学の集大成とも呼ぶべき『本草綱目』や奇経や脉診の解説書である『瀕湖脉学』、『奇経八脉考』を著した。
湖北省圻春県圻州鎮の医家の生まれです。科挙の郷試に失敗し、家にあって古来の漢方薬学書を研究しました。30歳頃からあきたらくなって各地を旅行し調査したり文献を集めたりはじめます。ついに自分の研究成果や新しい分類法を加え、30年の間に3度書き改めて、1578年<万暦6年>『本草綱目』を著して、中国本草学を確立させました。
関連処方李時珍、生家にて »



4.【中医臨床のための中薬学】(西暦1992年)
現在、私が使用している本草の辞典です。生薬の記載個数は、約2,700種に増えました。
神戸中医学研究会の編著です。
中医臨床のための中薬学


区切り
ハル薬局

【薬用部分】…葉

道教・八卦 人参

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