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生薬解説西洋人参せいようにんじん

生薬解説 西洋人参

西洋人参 説明表示をクリック → 説明表示  いらっしゃいませ

中国における薬物の応用の歴史は非常に古く、独特の理論体系と応用形式をもつに至っており、現在では伝統的な使用薬物を「中薬」とよんでいます。

中薬では草根木皮といわれる植物薬が大多数を占めるところから、伝統的に薬物学のことを「本草学」と称しており、近年は「中薬学」と名づけています。

中薬学は、中薬の性味・帰経・効能・応用・炮製・基原などの知識と経験に関する一学科であり、中医学における治療の重要な手段のひとつとして不可分の構成部分をなしています。

【大分類】補虚薬…正気を補う中薬です。
【中分類】補気薬…気を補う中薬です。

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【学名】…Panax quinqunfolius

【別名】…西洋参、セイヨウジン

 概要

「のぼせない人参」と言われる西洋人参は、朝鮮人参に比べて作用が穏やかなのが特徴です。
●滋養強壮に優れ、余分な熱を冷まして体に潤いを与える作用があるため、慢性疲労をはじめ、夏バテや口の渇き、糖尿病や慢性胃炎、抗がん剤の副作用などに利用されています。


 生薬生産地

中国地図 【その他産地】…アメリカ東部、カナダの肥沃な森林
日本産無


 処方と調合

西洋参は、朝鮮人参のように、体力を保つのに有効な、陰や体液の強壮薬として、たいてい単独で用いられます。また、肺の虚に関連する慢性的な咳、慢性病による疲労や衰弱にも使用されます。石膏(セッコウ)と配合し、暑の熱症状に関連する発熱にも使用されます。


 伝統的薬能

気、体液、陰の滋養
・肺の陰を強化する

薬物の治療効果と密接に関係する薬性理論(四気五味・昇降浮沈・帰経・有毒と無毒・配合・禁忌)の柱となるのが次に掲げる「性・味・帰経」です。

【温寒】…
※性:中薬はその性質によって「寒・涼・平・熱・温」に分かれます。例えぱ、患者の熱を抑える作用のある生薬の性は寒(涼)性であり、冷えの症状を改善する生薬の性は熱(温)性です。寒性涼性の生薬は体を冷やし、消炎・鎮静作用があり、熱性温性の生薬は体を温め、興奮作用があります。

生薬中薬)の性質と関連する病証
性質作用対象となる病証

寒/涼

熱を下げる。火邪を取り除く。毒素を取り除く。

熱証陽証陰虚証。

熱/温

体内を温める。寒邪を追い出す。陽を強める。

寒証陰証陽虚証。

熱を取り除き、内部を温める2つの作用をより穏やかに行う。

すべての病証。


【帰経】…心・肺・腎
帰経とは中薬が身体のどの部位(臓腑経絡)に作用するかを示すものです。

【薬味】…苦・微甘  まず心に入ります。
※味とは中薬の味覚のことで「辛・酸・甘・鹸・苦・淡」の6種類に分かれます。この上位5つの味は五臓(内臓)とも関連があり、次のような性質があります。
生薬中薬)の味と関連する病証
 味作用対象となる病証対象五臓

辛(辛味)

消散する/移動させる。体を温め、発散作用。

外証。風証。気滞証。血瘀証。

肺に作用。

酸(酸味)すっぱい。渋い。

縮小させる(収縮・固渋作用)。

虚に起因する発汗。虚に起因する出血。慢性的な下痢。尿失禁。

肝に作用。

甘(甘味)

補う。解毒する。軽減する。薬能の調整。緊張緩和・滋養強壮作用。

陰虚。陽虚。気虚。

脾に作用。

鹹(塩味)塩辛い。

軟化と排除。大腸を滑らかにする。しこりを和らげる軟化作用。

リンパ系その他のシステムが戦っているときの腫れ。

腎に作用。

苦(苦味)

上逆する気を戻す。湿邪を乾燥させる。気血の働きを活性化させる。熱をとって固める作用。

咳・嘔吐・停滞が原因の便秘。排尿障害。水湿証。肺気の停滞に起因する咳。血瘀証。

心に作用。

淡(淡味)

利尿。

水湿証。

【薬効】…心の改善作用  ホルモン作用作用  鎮静作用 

【薬理作用】…熱を冷まし、体液を生じる
・鎮静作用
・血糖値を降低する
・免疫機能の調節作用
・環境への適応能力を高める

【用途】…糖尿病
・高血圧
・更年期障害
・夏バテ
・スポーツ
・精神不安
・イライラ
・喉の渇き
・ほてり
・のぼせ
・寝汗

【学名】…Panax quinqunfolius

【禁忌】…妊娠中や、胃に寒や湿の徴候がある場合は使用を避けます。

【出典】…本草綱目拾遺


 生薬の画像

【基原(素材)】…ウコギ科AraliaceaeのアメリカニンジンPanax quinquefolium L.の根。

図02:西洋人参の生薬画像


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 方剤リンク


生薬 生薬は、薬草を現代医学により分析し、効果があると確認された有効成分を利用する薬です。 生薬のほとんどは「日本薬局方」に薬として載せられているので、医師が保険のきく薬として処方する場合もあります。


中薬・中成薬 中薬は、本場中国における漢方薬の呼び名です。薬草単体で使用するときを中薬、複数組み合わせるときは、方剤と呼び分けることもあります。
本来中薬は、患者個人の証に合わせて成分を調整して作るものですが、方剤の処方を前もって作成した錠剤や液剤が数多く発売されています。これらは、中成薬と呼ばれています。 従って、中国の中成薬と日本の漢方エキス剤は、ほぼ同様な医薬品といえます。


 詳細

滋養強壮作用に優れた中国で人気の高い生薬

西洋人参は、朝鮮人参と同じウコギ科の植物ですが、原産地は北米で、カナダやアメリカ北部の森林に自生しています。赤い小さな実が密集して結実する姿が、アメリカ国旗(花旗)に似ていることから、別名「花旗参」とも呼ばれています。
西洋人参の薬用が知られるきっかけになったのは、朝鮮人参でした。今から約三〇〇年前に、フランスの牧師が中国の東北地方を訪れた時、地元の人々から元気になる神秘な植物(朝鮮人参)の話を聞いて興味を抱きました。その話をもとに長白山の人参の形態や薬効について調査し、植物図をつけた論文をイギリスロイヤル協会の会誌に発表しました。
その論文を読んだカナダに住む別のフランス人宣教師が、現地の人々の協力を得て、モントリオールの山林の中で、論文と同じ形態の野生植物を発見します。植物専門家に検証してもらった結果、同じウコギ科でも種は違うことが判明したため、両者を区別するために「西洋人参」と命名されました。
中国へは、一七一六年頃にカナダから輸入されたと言われています。また、清の時代の康煕皇帝が満州祖先の発祥地である長白山に敬意を表すため、聖地として長白山のすべての草木の伐採を禁止したため、人参の供給が不足し、その結果、西洋人参の大量輸入につながったとも言われています。西洋人参は、清代の一六七四年に著された『本草備要』で正式に生薬として収録されました。現在では、中国各地で栽培されています。
補益薬である西洋人参は滋養強壮に優れ、免疫機能を高める作用のあることが知られています。滋養強壮の生薬といえば、朝鮮人参が有名ですが、西洋人参は朝鮮人参に比べて作用が穏やかで、神経を興奮させたり、血圧を上昇させたりする心配がないため、応用範囲が広いのが特徴です。
西洋人参の薬性は体に潤いを与え、熱を冷まして興奮を鎮める「寒性」で、朝鮮人参は反対に、体を温めて新陳代謝を活発にする「温性」の薬性を持っています。
強壮作用のある生薬は、健康食品として用いられることが多く、長年中国で「不老長寿」の強壮食品として不動の地位を誇っていた朝鮮人参を抜いて、西洋人参のブームになっています。贈答品としても人気が高く、長寿と健康を願って両親に贈る人も多く見られます。

糖尿病や高血圧、老化防止など幅広く応用される多用な作用を持つ

西洋人参には、強壮作用をはじめ、血糖降下作用、免疫増強作用など、さまざまな作用を持っていますが、特に不足した気(エネルギー)を補い、陰液を養う益気養陰作用と、体内の熱を冷まして体液を補う清塾生津作用に優れているため、主に気と陰が不足した気陰両虚の症状の改善に用いられています。
一七五七年に編纂された『本草従新』には、「肺の機能を補い、降火(解熱及び消炎)、津液(体に必要な体液)の生成、心煩(胸部に熱を感じて胸苦しい症状)及び倦怠除去の効能があり、抗病能力や生理機能が低下し、微熱もあるような者に適している」と掲載されています。
臨床応用としては、まず、のどの渇きやだるさなどの気陰両虚タイプの症状が見られる糖尿病によく用いられます。この場合は微少循環を改善する「冠元穎粒」などと併用するともっと良いです。
また、空咳や喘息などの慢性呼吸器疾患の症状にも効果があり、この場合は「麦門冬湯」や「双料参茸丸」などと併用されるのが一般的です。
慢性胃炎(陰虚型)には、「星火健胃錠」などとの併用が効果的です。
また、不整脈や狭心症、心不全などの疾患には、沙疎フラボノイドや「冠元穎粒」、更年期などの情緒不安や不眠には「帰脾錠」や「酸裏仁湯」とともに使用されます。
他に気と陰を消耗する抗がん剤の副作用(陰虚火旺)を緩和する働きも持っています。


 備考

この植物は、18世紀初頭にカナダのイエズス会の聖職者に"発見"され、1765年には、中国の漢方学者によって趙学敏著の『本草綱目拾遺』に紹介されました。
西洋参は急速に貴重な輸出品になりました。19世紀には、ダニエル・ブーンをはじめとする開拓者らによって採取され、中国に大量に輸出されました。


生薬陳列

 生薬の書物の歴史

1.【神農本草経】(西暦112年)
中医薬学の基礎となった書物です。植物薬252種、動物薬67種、鉱物薬46種の合計365種に関する効能と使用方法が記載されています。
神農本草経

神農神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂 »に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。



2.【本草経集注】(西暦500年頃)
斉代の500年頃に著された陶弘景(とうこうけい)の『本草経集注(しっちゅう)』です。掲載する生薬の数は、『神農本草経』(112年)の2倍に増えました。 本草経集注(しっちゅう)
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)

陶弘景(456~536年)は、中国南北朝時代(420~589年)の文人、思想家、医学者です。江蘇省句容県の人です。茅山という山中に隠棲し、陰陽五行、山川地理、天文気象にも精通しており、国の吉凶や、祭祀、討伐などの大事が起こると、朝廷が人を遣わして陶弘景に教えを請いました。
そのために山中宰相と呼ばれました。庭に松を植える風習は陶弘景からはじまり、松風の音をこよなく愛したものも陶弘景が最初です。
風が吹くと喜び勇んで庭に下り立ち、松風の音に耳をかたむける陶弘景の姿はまさに仙人として人々の目に映ったことでしょう。



3.【本草項目】(西暦1578年)
30年近い歳月を費やして明代の1578年に完成された李時珍(りじちん)の『本草項目』です。掲載する生薬の数は、約1900種に増えました。
『本草綱目』は、1590年代に金陵(南京)で出版され、その後も版を重ねました。わが国でも、徳川家康が愛読したほか、薬物学の基本文献として尊重され、小野蘭山陵『本草綱目啓蒙』など多くの注釈書、研究書が著されています。
本草綱目は日本などの周辺諸国のみならず、ラテン語などのヨーロッパ語にも訳されて、世界の博物学・本草学に大きな影響を与えています。
本草項目
儒者・林羅山(1583~1657年)の旧蔵書

李時珍 李時珍(1518~1593年)は、中国明時代(1368~1644年)の中国・明の医師で本草学者。中国本草学の集大成とも呼ぶべき『本草綱目』や奇経や脉診の解説書である『瀕湖脉学』、『奇経八脉考』を著した。
湖北省圻春県圻州鎮の医家の生まれです。科挙の郷試に失敗し、家にあって古来の漢方薬学書を研究しました。30歳頃からあきたらくなって各地を旅行し調査したり文献を集めたりはじめます。ついに自分の研究成果や新しい分類法を加え、30年の間に3度書き改めて、1578年<万暦6年>『本草綱目』を著して、中国本草学を確立させました。
関連処方李時珍、生家にて »



4.【中医臨床のための中薬学】(西暦1992年)
現在、私が使用している本草の辞典です。生薬の記載個数は、約2,700種に増えました。
神戸中医学研究会の編著です。
中医臨床のための中薬学


区切り
ハル薬局

【薬用部分】…根

【中国での一般的服用量】…3~6g


道教・八卦 人参

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