生薬解説板藍根ばんらんこん

生薬解説 板藍根

【大分類】清熱剤…熱を除去する中薬です。
【中分類】清熱解毒薬…熱毒を解毒除去する中薬です。

中国における薬物の応用の歴史は非常に古く、独特の理論体系と応用形式をもつに至っており、現在では伝統的な使用薬物を「中薬」とよんでいます。

中薬では草根木皮といわれる植物薬が大多数を占めるところかろ、伝統的に薬物学のことを「本草学」と称しており、近年は「中薬学」と名づけています。

中薬学は、中薬の性味・帰経・効能・応用・炮製・基原などの知識と経験に関する一学科であり、中医学における治療の重要な手段のひとつとして不可分の構成部分をなしています。

キャッチコピーインフルエンザ対応

【別 名】…ホソバタイセイ・タイセイ・リュウキュウアイ


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 概 要

●清熱涼血解毒。

●板藍根はリュウキュウアイ(馬藍)、タイセイ(松藍)、ホソバタイセイの根のことをさします。

●中国では肝炎やインフルエンザ、耳下腺炎(おたふくカゼ)、扁桃腺炎などの治療に欠かせない生薬として大切にされています。

●かつて上海でA型肝炎が大流行した時、予防と治療に大活躍したということです。

●現在でも、B型・C型肝炎だけでなく、インフルエンザなどにもよく用いられています。

●インフルエンザウイルスA(およびB)に対する板藍根熱水抽出物の作用について調べました。その結果、板藍根はインフルエンザ抑制に役立つことが考えられました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21774246

 生薬生産地

中国地図 【中国産地】…河北省、江蘇省


 処方と調合


 伝統的薬能

【基原(素材)】…アブラナ科の植物菘藍(ショウバン・ホソバタイセイ・タイセイ)の根。
アブラナ科CruciferaeのIsatis tinctoria L, タイセイI.indigoticaの根.なお中国南部ではキツネノマゴ科AcanthaceaeのリュウキュウアイBaphicacanthes cusia BREMEKなどの根が利用される。

※薬物の治療効果と密接に関係する薬性理論(四気五味・昇降浮沈・帰経・有毒と無毒・配合・禁忌)の柱となるのが次に掲げる「性・味・帰経」です。

【温寒】… 寒
※性:中薬はその性質によって「寒・涼・平・熱・温」に分かれます。例えぱ、患者の熱を抑える作用のある生薬の性は寒(涼)性であり、冷えの症状を改善する生薬の性は熱(温)性です。寒性涼性の生薬は体を冷やし、消炎・鎮静作用があり、熱性温性の生薬は体を温め、興奮作用があります。

生薬中薬)の性質と関連する病証
性質作用対象となる病証

寒/涼

熱を下げる。火邪を取り除く。毒素を取り除く。

熱証陽証陰虚証。

熱/温

体内を温める。寒邪を追い出す。陽を強める。

寒証陰証陽虚証。

熱を取り除き、内部を温める2つの作用をより穏やかに行う。

すべての病証。

 【升降】…
【帰経】…心・胃・肺
帰経とは中薬が身体のどの部位(臓腑経絡)に作用するかを示すものです。

【薬味】…苦・寒  まず心に入ります。
※味とは中薬の味覚のことで「辛・酸・甘・鹸・苦・淡」の6種類に分かれます。この上位5つの味は五臓(内臓)とも関連があり、次のような性質があります。
生薬中薬)の味と関連する病証
 味作 用対象となる病証対象五臓

辛(辛味)

消散する/移動させる。体を温め、発散作用。

外証。風証。気滞証。血瘀証。

肺に作用。

酸(酸味)すっぱい。渋い。

縮小させる(収縮・固渋作用)。

虚に起因する発汗。虚に起因する出血。慢性的な下痢。尿失禁。

肝に作用。

甘(甘味)

補う。解毒する。軽減する。薬能の調整。緊張緩和・滋養強壮作用。

陰虚。陽虚。気虚。

脾に作用。

鹹(塩味)塩辛い。

軟化と排除。大腸を滑らかにする。しこりを和らげる軟化作用。

リンパ系その他のシステムが戦っているときの腫れ。

腎に作用。

苦(苦味)

上逆する気を戻す。湿邪を乾燥させる。気血の働きを活性化させる。熱をとって固める作用。

咳・嘔吐・停滞が原因の便秘。排尿障害。水湿証。肺気の停滞に起因する咳。血瘀証。

心に作用。

淡(淡味)

利尿。

水湿証。

【薬効】…清熱作用  凉血作用  解毒作用 

【薬理作用】…瘟疫(うんえき)(インフルエンザ・日本脳炎など)の高熱・頭痛、大頭瘟(だいずうん)(顔面丹毒)・胙腮(ささえ)(流行性耳下腺炎)の腫脹疼痛、爛喉丹沙(らんこうたんしゃ)(猩紅熱)などに,薄荷・牛黄子・連翻・黄苓・玄参などと用いる。

【用 途】…インフルエンザ、おたふくかぜ、ウイルス性肝炎

【禁 忌】…体質や体調によって、効かない場合やアレルギーを起こすこともあります。

【注 意】…●実熱火毒にのみ使用します。

【出典】…本草目網


 生薬の画像

●板藍根の植物画像


●板藍根の根


●板藍根の花


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 方剤リンク

関連リンク 本中薬(板藍根)を使用している方剤へのリンクは次のとおりです。
  関連処方板藍根 »


生薬 生薬は、薬草を現代医学により分析し、効果があると確認された有効成分を利用する薬です。 生薬のほとんどは「日本薬局方」に薬として載せられているので、医師が保険のきく薬として処方する場合もあります。

中薬・中成薬 中薬は、本場中国における漢方薬の呼び名です。薬草単体で使用するときを中薬、複数組み合わせるときは、方剤と呼び分けることもあります。
本来中薬は、患者個人の証に合わせて成分を調整して作るものですが、方剤の処方を前もって作成した錠剤や液剤が数多く発売されています。これらは、中成薬と呼ばれています。 従って、中国の中成薬と日本の漢方エキス剤は、ほぼ同様な医薬品といえます。


 詳 細

ウイルス感染症の消炎、解熱、抗化膿

扁桃腺炎、感冒発熱、口内炎、結膜炎、耳下腺炎、風疹、気管支炎、肺炎

各種皮膚疾患の消炎、抗化膿

毛嚢炎、ニキビ、吹き出物、湿疹、丹毒

消化器疾患

ウイルス性肝炎


 成 分

インディルビン
          インディゴチン
インドキシルーβーグリコシド
βーシトステロール
      イサチン
植物性タンパク
         樹脂状物・糖類
グラム陽性及び陰性菌に対する抑菌物質


 備 考

温暖な気候に適し、土層が深くて厚い排水の良好な砂質譲土及び、腐植質譲土で育つとあります。
40~90センチの高さにまで成長します。

次の書籍の内容を参照してください。

●週刊朝日増刊号『漢方2008』朝日新聞社 2008.4.5発行の103頁
銀翹散は、このように体を冷やしながら軽く発汗させる作用で、上気道感染症に効果をあげている。これに板藍根や白花蛇舌草などの清熱解毒薬を併用するとさらに効果が増す。

●『東洋医学のしくみ』関口善太 日本実業出版社 2003.8.1初版発行の169頁
板藍根が中薬の中の清熱剤・清熱解毒薬の一覧に記載されています。

●『中国漢方がよくわかる本』路京華 河出書房新社 2001.8.30初版発行の20頁
この本は、読売新聞の日曜版に1993.4.4~1995.7.9まで、2年4カ月にわたって連載したコラム《漢方漫歩》の内容に加筆修正を加えて発行したものです。 抗菌、抗ウイルス作用のある板藍根などの生薬
流感に使え、副作用もない清熱解毒薬
三寒四温といわれる、気候が目まぐるしく変わる春先は、体調を崩して、流感(インフルエンザ)や各種の感染症にもかかりやすい。
風邪に対して、一般的には解熱剤のほか、細菌感染を予防したり、おさえるため、抗生物質を併用することが多い。ただし、抗生物質は細菌による炎症や熱に対しては有効だが、流感のようなウイルス性のものには効果がない。
漢方薬にも、解熱作用と抗菌作用を併せもち、抗生物質とよく似た作用をもつ生薬類があるが、西洋薬とはひと味違う。
たとえば板藍根、金銀花、連翹など、いわゆる清熱解毒薬といわれる生薬には、抗菌作用のほか、抗ウイルス作用があるので流感にも使える。そのうえ、細菌やウイルスが放出した毒素を中和し免疫力を高める作用があり、さらに抗生物質のような副作用がないといったメリットもある。
中国では板藍根(アプラや科・タイセイの根)のエキス剤がよく知られており、流感だけでなく、扁桃腺炎、流行性耳下腺炎(オタフクカゼ)、帯状庖疹、ウイルス性肝炎などにも幅広く応用されている。
近年、そのエキス剤が日本へも板藍茶として輸入されている。
また、清熱解毒の作用をさらに高めるには、板藍根と同じような解熱・消炎作用をもった、金銀花や連剋などが配合された天津感冒片との併用をすすめたい。

●『中医臨床のための中薬学』神戸中医学研究会編著 医歯薬出版株式会社 1992.10.20第1版の116頁
板藍根(ばんらんこん)
〔処方用名〕板藍根.
〔基原〕アブラナ科CruciferaeのIsatis tinctoria L.,タイセイ I.indigoticaの根.なお中国南部ではキツネノマゴ科AcanthaceaeのリュウキュウアイBaphicacanthes cusia Bremek.などの根が利用される.
〔性味〕苦,寒.
〔帰経〕心・胃.
〔効能と応用〕
①清熱涼血解毒
瘟疫(うんえき)(インフルエンザ・日本脳炎など)の高熱・頭痛,大頭瘟(顔面丹毒)・月乍腮(ささい)(流行性耳下腺炎)の腫脹疼痛,燗喉丹しゃ(猩紅熱)などに,薄荷・牛蒡子・連翹・黄筎・玄参などと用いる.
[方剤例]普済消毒飲.
〔臨床使用の要点〕
板藍根は苦寒で下降し,清熱解毒の要薬であり,瘟疫熱病の高熱頭痛・大頭瘟の頭面紅腫や咽喉腫痛・爛喉丹しゃなど頭面部の熱毒に適している.
〔参考〕大青葉と板藍根はほぼ同じ効能をもち代用できるが,大青葉は散に偏して斑毒口瘡に適し,板藍根は降に偏して頭瘟・喉燗に適する.
〔用量〕3~15g,大量で15~30g,煎服.
〔使用上の注意〕実熱火毒にのみ用いる.

●『臨床中医学概論』張瓏英 緑書房 1988.6.20第1刷発行の165頁
大青葉(だいせいよう)と板藍根(ばんらんこん)
性味:苦,寒。
帰経:心・胃経。
〔薬理作用〕大青葉は葉であり板藍根は同一植物の根である。
清熱,涼血,解毒作用がある。実験室ではチフス菌,溶血性連鎖状球菌,大腸菌,赤痢菌,黄色ブドウ状球菌に抑制作用が証明されている。
近年,ウイルス疾患に相当強力な効果が認められ注目されている。特に流行性耳下腺炎では,大青葉,板藍根単味の煎剤でよく効果をあげている。中国では「板藍根錠剤」として一般に市販されている。
その他インフルエンザ,日本脳炎,麻疹,肝炎等にも有効であるとしばしば報告されている。
現在では,ウイルス疾患の治療に際し,欠かせない薬剤となっている。
〈大頭瘟の治療に用いる〉大頭瘟とは「大頭風」「大頭傷寒」とも呼ばれ,流行性の温毒が肺胃に侵入して発病する。頭や顔が赤く腫れ,ノドが腫膿し,激しい疼痛を特徴とする。
〈時疫斑疹〉流行性の熱病であり,瘟毒が血分に侵入し,営血分に熱積すると,発熱,口渇,頭痛,咽頭痛,鼻血,皮疹,舌縫紫暗となる。
現代医学でいうウイルス性流行病をさしていると思われ,本剤はその特効薬として用いられる。
〈咽喉腫痛〉風熱毒火が咽喉部を冒すと,発熱,頭痛,便秘,咽喉腫脹熱痛を起こす。本剤はこれによく対応する。
〔用量〕常用量は6~15g,重症には30gぐらい使う。
板藍根の常用量は4.5~9g,重症には15gぐらい用いる。
〔使用上の注意〕
・脾胃虚寒の者には慎重に用いる。
・両者とも,清熱,涼血,解毒の作用があるが,大青葉は板蘭根に比べ,涼血,解毒,化斑(皮疹を消失させる)に勝っている。
板藍根は,ノドの腫脹,疼痛,大頭瘟の治療に勝っている。特に流行性耳下腺炎には特効的である。また,肝炎にも有効であるという報告もある。


生薬陳列

 生薬の書物の歴史

1.【神農本草経】(西暦112年)
中医薬学の基礎となった書物です。植物薬252種、動物薬67種、鉱物薬46種の合計365種に関する効能と使用方法が記載されています。
神農本草経

神農神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂 »に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。



2.【本草経集注】(西暦500年頃)
斉代の500年頃に著された陶弘景(とうこうけい)の『本草経集注(しっちゅう)』です。掲載する生薬の数は、『神農本草経』(112年)の2倍に増えました。 本草経集注(しっちゅう)
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)

陶弘景(456~536年)は、中国南北朝時代(420~589年)の文人、思想家、医学者です。江蘇省句容県の人です。茅山という山中に隠棲し、陰陽五行、山川地理、天文気象にも精通しており、国の吉凶や、祭祀、討伐などの大事が起こると、朝廷が人を遣わして陶弘景に教えを請いました。
そのために山中宰相と呼ばれました。庭に松を植える風習は陶弘景からはじまり、松風の音をこよなく愛したものも陶弘景が最初です。
風が吹くと喜び勇んで庭に下り立ち、松風の音に耳をかたむける陶弘景の姿はまさに仙人として人々の目に映ったことでしょう。



3.【本草項目】(西暦1578年)
30年近い歳月を費やして明代の1578年に完成された李時珍(りじちん)の『本草項目』です。掲載する生薬の数は、約1900種に増えました。
『本草綱目』は、1590年代に金陵(南京)で出版され、その後も版を重ねました。わが国でも、徳川家康が愛読したほか、薬物学の基本文献として尊重され、小野蘭山陵『本草綱目啓蒙』など多くの注釈書、研究書が著されています。
本草綱目は日本などの周辺諸国のみならず、ラテン語などのヨーロッパ語にも訳されて、世界の博物学・本草学に大きな影響を与えています。
本草項目
儒者・林羅山(1583~1657年)の旧蔵書

李時珍 李時珍(1518~1593年)は、中国明時代(1368~1644年)の中国・明の医師で本草学者。中国本草学の集大成とも呼ぶべき『本草綱目』や奇経や脉診の解説書である『瀕湖脉学』、『奇経八脉考』を著した。
湖北省圻春県圻州鎮の医家の生まれです。科挙の郷試に失敗し、家にあって古来の漢方薬学書を研究しました。30歳頃からあきたらくなって各地を旅行し調査したり文献を集めたりはじめます。ついに自分の研究成果や新しい分類法を加え、30年の間に3度書き改めて、1578年<万暦6年>『本草綱目』を著して、中国本草学を確立させました。
関連処方李時珍、生家にて »



4.【中医臨床のための中薬学】(西暦1992年)
現在、私が使用している本草の辞典です。生薬の記載個数は、約2,700種に増えました。
神戸中医学研究会の編著です。
中医臨床のための中薬学


区切り
人参 道教・八卦

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