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生薬解説蒼耳子そうじし玄武

生薬解説 蒼耳子

中国における薬物の応用の歴史は非常に古く、独特の理論体系と応用形式をもつに至っており、現在では伝統的な使用薬物を「中薬」とよんでいます。

中薬では草根木皮といわれる植物薬が大多数を占めるところから、伝統的に薬物学のことを「本草学」と称しており、近年は「中薬学」と名づけています。

中薬学は、中薬の性味・帰経・効能・応用・炮製・基原などの知識と経験に関する一学科であり、中医学における治療の重要な手段のひとつとして不可分の構成部分をなしています。

【大分類】祛風湿薬…風湿(風邪+湿邪)が侵襲して起こる肢体の痛みに対して用いる中薬です。

キャッチコピー鎮痛、消炎、止痒、抗菌!

【学名】…Xanthium strumarium

【別名】…オナモミ

 概要

蒼耳は、文字どおり『深緑色の耳形の種』という意味で、風湿を取り除くのに使用される生薬の一つです。

●風湿は鼻づまりを引き起こすことが多いのですが、中国の研究では、この生薬は鼻の粘膜に非常によ<作用し、長年患っているアレルギー性鼻炎にも有効であるとわかっています。

●この生薬は620年ごろ孫思遥によって書かれた『千金要方』に初めて紹介されました。


 生薬生産地

中国地図 【中国産地】…中国全土
【日本産地】…北海道から沖縄で自生
【その他産地】…台湾、朝鮮半島、北米
日本産無
中華線


 処方と調合

蒼耳(オナモミ)は薄荷(八ツカ)および金銀花(スイカズラ)と配合し、慢性的な風熱の病症にある副鼻腔の問題に使用します。
●黄苓(スカルキャップ)を配合し、急性の風熱の症状に使用します。
●金櫻子(ナニワイバラ)および五味子(チョウセンゴミシ)と配合し、アレルギー性鼻炎に使用します。


 伝統的薬能

鼻づまりを治す。
・痺証(関節炎やリウマチ)や皮膚炎を引き起こす風湿を追い出す。
・外風による痛みを取り除く。

薬物の治療効果と密接に関係する薬性理論(四気五味・昇降浮沈・帰経・有毒と無毒・配合・禁忌)の柱となるのが次に掲げる「性・味・帰経」です。

【温寒】… 温
※性:中薬はその性質によって「寒・涼・平・熱・温」に分かれます。例えぱ、患者の熱を抑える作用のある生薬の性は寒(涼)性であり、冷えの症状を改善する生薬の性は熱(温)性です。寒性涼性の生薬は体を冷やし、消炎・鎮静作用があり、熱性温性の生薬は体を温め、興奮作用があります。

生薬中薬)の性質と関連する病証
性質作用対象となる病証

寒/涼

熱を下げる。火邪を取り除く。毒素を取り除く。

熱証陽証陰虚証。

熱/温

体内を温める。寒邪を追い出す。陽を強める。

寒証陰証陽虚証。

熱を取り除き、内部を温める2つの作用をより穏やかに行う。

すべての病証。


朱雀 【帰経】…肺・脾
帰経とは中薬が身体のどの部位(臓腑経絡)に作用するかを示すものです。

【薬味】…甘・苦  まず脾に入ります。  次に心に入ります。
※味とは中薬の味覚のことで「辛・酸・甘・鹸・苦・淡」の6種類に分かれます。この上位5つの味は五臓(内臓)とも関連があり、次のような性質があります。
生薬中薬)の味と関連する病証
 味作用対象となる病証対象五臓

辛(辛味)

消散する/移動させる。体を温め、発散作用。

外証。風証。気滞証。血瘀証。

肺に作用。

酸(酸味)すっぱい。渋い。

縮小させる(収縮・固渋作用)。

虚に起因する発汗。虚に起因する出血。慢性的な下痢。尿失禁。

肝に作用。

甘(甘味)

補う。解毒する。軽減する。薬能の調整。緊張緩和・滋養強壮作用。

陰虚。陽虚。気虚。

脾に作用。

鹹(塩味)塩辛い。

軟化と排除。大腸を滑らかにする。しこりを和らげる軟化作用。

リンパ系その他のシステムが戦っているときの腫れ。

腎に作用。

苦(苦味)

上逆する気を戻す。湿邪を乾燥させる。気血の働きを活性化させる。熱をとって固める作用。

咳・嘔吐・停滞が原因の便秘。排尿障害。水湿証。肺気の停滞に起因する咳。血瘀証。

心に作用。

淡(淡味)

利尿。

水湿証。

 【毒性】…小毒

【薬効】…鎮痛作用  消炎作用  止痒作用  抗菌作用 

【薬理作用】…抗菌、抗カタル性抗真菌、抗リウマチ、鎮痙、鎮痛

【用途】…去風散湿・通鼻竅 発汗・鎮痛・抗菌・消炎の作用があり、in vitro で黄色ブドウ球菌を抑制する。ただし、口渇・便秘などの副作用がある。蒼耳子から一種の配糖体様の黄白色結晶が得られるが、これが主な毒性成分と考えられる。動物実験によると、主として血糖を急激に下降して昏睡・死亡に至らしめる。

【学名】…Xanthium strumarium

【禁忌】…●貧血や血の虚に関連する頭痛または関節痛がある場合は使用しないこと。
●xanthostrumarinという化学物質が含まれているため、多量に服用すると有毒で、痙攣を引き起こす可能性があります。

【注意】…蒼耳には全株に毒がある。果実の毒性が最も強く、鮮葉は乾燥葉より、若い葉は古い葉より毒性が強い。毒性成分は xanthostrumarin と alkaloid である。 中毒症状は、服用後2日目以後に発生することが多く、上腹部が脹って苦しい・悪心・嘔吐・腹痛・下痢・無力感・煩躁などである。ひどいときは肝障害による黄疸・毛細管透過性増大による出血・意識障害・痙攣あるいは呼吸・循環・腎機能不全による死亡を引き起こす。

【出典】…神農本草経
【三品分類(中国古代の分類)】… 神農本草経や名医別録などでの生薬分類法
中品(保健薬)


 生薬の画像

【基原(素材)】…キク科成熟果実

蒼耳子の植物画像


蒼耳子の生薬画像


蒼耳子の生薬画像


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 方剤リンク

本中薬(蒼耳子)を使用している方剤へのリンクは次のとおりです。関連リンク


  関連処方蒼耳散 »


生薬 生薬は、薬草を現代医学により分析し、効果があると確認された有効成分を利用する薬です。 生薬のほとんどは「日本薬局方」に薬として載せられているので、医師が保険のきく薬として処方する場合もあります。


中薬・中成薬 中薬は、本場中国における漢方薬の呼び名です。薬草単体で使用するときを中薬、複数組み合わせるときは、方剤と呼び分けることもあります。
本来中薬は、患者個人の証に合わせて成分を調整して作るものですが、方剤の処方を前もって作成した錠剤や液剤が数多く発売されています。これらは、中成薬と呼ばれています。 従って、中国の中成薬と日本の漢方エキス剤は、ほぼ同様な医薬品といえます。


 詳細

①急性副鼻腔炎(鼻淵)で、発熱・頭痛・膿性鼻汁などの熱象(炎症)をともなうとき、慢性の場合、アレルギー性鼻炎に用いる。

②関節の運動障害・遊走性の疼痛などの風湿による痺痛に用いる。

③風邪による頭痛(いわゆる“頭風”)で、錐をさすような疼痛が項部へ放散する・風にあたると痛みがひどくなるなどの症状があるときに使用する。

④蕁麻疹に、蒼耳子を水煎して外用する(茎・葉も一緒に用いる方がよい)。


 備考

晩秋から初冬にかけて野山を歩いていると、ズボンの裾、靴下、スニーカーの紐などにひっつき虫が付いて取り去るのに一苦労します。一般的にひっつき虫と呼ばれる植物は鉤や逆さとげなどによって衣類に引っかかったり、粘液によって張り付いたりする種子や果実の俗称で、センダングサの仲間やヤブジラミの仲間などがよく知られています。今回の話題のオナモミは中でも大型のひっつき虫として知られる植物です。

 蒼耳子は『神農本草経』の中品に葈耳実の原名で収載されています。『唐本草』には「蒼耳」の名が記され、『本草綱目』の中で李時珍は「その葉の形が葈麻のようでもあり、茄のようでもあることから、葈耳とか野茄とかの諸名がある」と言っています。『図経本草』には「葈耳は安陸(湖北省安陸県)の川谷および六安(安徽省六安県)の田野に生じる。今は処々にある。詩経ではこれを巻耳といい爾雅には苓耳といい、広雅では葈耳という。」と記され、いずれも実の形状に対して命名されています。また、「此のもの本来は蜀中に生じ、その実に刺が多くて羊が通過するときに毛に粘りつき、遂に中国に来たので羊負来の名があり、俗に道人頭ともいう。」と伝播の由来が記されています。『救荒本草』には「蒼耳は、葉青白く粘糊菜の葉に類し、秋季中に桑椹のようで短小な刺の多い実を結ぶ」とあり、『図経本草』の「?州葈耳」の図からも明らかにキク科のオナモミであると考えられます。

 オナモミはユーラシア大陸に広く分布し、日本にも古くから帰化して全国的に見られる植物ですが、近年はどちらかと言えば珍しい植物になりかけています。最近多く見かけるのはやはり帰化植物でより大型になるオオオナモミ X. orientale や、さらに大型で果実の表面やとげに鱗片状の毛があるイガオナモミX. orientale subsp. Italicumです。

 和名の由来には諸説あり、引っかかるという意味の「ナゴム」に由来するとも、茎葉を揉んでつけると虫刺されに効くためナモミ(菜揉み)の名がついたともいわれています。また、似た名前の植物にメナモミがあり、オナモミはメナモミに対して大型であることから雌ナモミに対して雄ナモミと呼ばれるようになったとされています。中国では蒼耳といいますが、これは偽果が女性の耳飾りに似ていることによるとされています。オナモミは一年草のわりにはしっかりとした茎と厚い葉をつけ、高さは 40?100 cm、葉身は卵状三角形で、不揃いな鋸歯があります。球形の頭花には雌性と雄性があり、それぞれ多数の小さな白い花が咲きます。雌性頭花の総苞内片は合生して楕円体となり、中に2個の痩果を有し、表面に鉤状のとげを多数つけます。これが引っ付き虫となりまた薬用部位とされる偽果です。

 オナモミの全草には有毒成分のキサンツミンなどが含まれ、毒性は果実が最も強く、鮮葉は乾燥葉より、若い葉は古い葉より毒性が強いとされ、過量に服すると眩暈、頭痛、嘔吐、下痢、蕁麻疹、さらには意識障害や痙攣、肝機能障害などが出現し死亡することもあります。漢方では鼻孔を通じ、風湿を去る効能があり、感冒による頭痛、鼻炎、歯痛、四肢のしびれや痛み、皮膚病などに用いられ、急性・慢性鼻炎や蓄膿症、アレルギー性鼻炎などには辛夷などと配合します。その他、炎症性の鼻づまりには菊花・金銀花と配合する鼻淵丸が、鼻がつまって頭痛がするときに辛夷、白?、薄荷などと用いる蒼耳散があります。大粒でふくらみ、黄緑色のものが良品とされます。また、オナモミの茎の中に寄生する幼虫は蒼耳蠹虫と呼ばれ、疔腫や痔瘡に効果があるとされています。

 オナモミは中国では普通に見られますが、先述したように近年日本では絶滅危惧種に指定されるほど少なくなりました。これも帰化植物の命運でしょうか。一方であとから入ってきたオオオナモミやイガオナモミはどんどん個体数を増やし、前者は日本の侵略的外来種ワースト100に数えられているようです。これらも果たして蒼耳子として利用できるのかどうか、代用品として出回っていますが品質的には疑問視されているようです。


生薬陳列

 生薬の書物の歴史

1.【神農本草経】(西暦112年)
中医薬学の基礎となった書物です。植物薬252種、動物薬67種、鉱物薬46種の合計365種に関する効能と使用方法が記載されています。
神農本草経

神農神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂 »に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。



2.【本草経集注】(西暦500年頃)
斉代の500年頃に著された陶弘景(とうこうけい)の『本草経集注(しっちゅう)』です。掲載する生薬の数は、『神農本草経』(112年)の2倍に増えました。 本草経集注(しっちゅう)
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)

陶弘景(456~536年)は、中国南北朝時代(420~589年)の文人、思想家、医学者です。江蘇省句容県の人です。茅山という山中に隠棲し、陰陽五行、山川地理、天文気象にも精通しており、国の吉凶や、祭祀、討伐などの大事が起こると、朝廷が人を遣わして陶弘景に教えを請いました。
そのために山中宰相と呼ばれました。庭に松を植える風習は陶弘景からはじまり、松風の音をこよなく愛したものも陶弘景が最初です。
風が吹くと喜び勇んで庭に下り立ち、松風の音に耳をかたむける陶弘景の姿はまさに仙人として人々の目に映ったことでしょう。



3.【本草項目】(西暦1578年)
30年近い歳月を費やして明代の1578年に完成された李時珍(りじちん)の『本草項目』です。掲載する生薬の数は、約1900種に増えました。
『本草綱目』は、1590年代に金陵(南京)で出版され、その後も版を重ねました。わが国でも、徳川家康が愛読したほか、薬物学の基本文献として尊重され、小野蘭山陵『本草綱目啓蒙』など多くの注釈書、研究書が著されています。
本草綱目は日本などの周辺諸国のみならず、ラテン語などのヨーロッパ語にも訳されて、世界の博物学・本草学に大きな影響を与えています。
本草項目
儒者・林羅山(1583~1657年)の旧蔵書

李時珍 李時珍(1518~1593年)は、中国明時代(1368~1644年)の中国・明の医師で本草学者。中国本草学の集大成とも呼ぶべき『本草綱目』や奇経や脉診の解説書である『瀕湖脉学』、『奇経八脉考』を著した。
湖北省圻春県圻州鎮の医家の生まれです。科挙の郷試に失敗し、家にあって古来の漢方薬学書を研究しました。30歳頃からあきたらくなって各地を旅行し調査したり文献を集めたりはじめます。ついに自分の研究成果や新しい分類法を加え、30年の間に3度書き改めて、1578年<万暦6年>『本草綱目』を著して、中国本草学を確立させました。
関連処方李時珍、生家にて »



4.【中医臨床のための中薬学】(西暦1992年)
現在、私が使用している本草の辞典です。生薬の記載個数は、約2,700種に増えました。
神戸中医学研究会の編著です。
中医臨床のための中薬学


区切り
ハル薬局

【薬用部分】…果実

 成分

セスキテルペンxanthostrumarin、脂肪油、タンパク質


【中国での一般的服用量】…3~9g


道教・八卦 人参 中華 薬研(やげん)

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