Now Loading

生薬解説麻子仁ましにん

生薬解説 麻子仁

麻子仁 説明表示をクリック → 説明表示  いらっしゃいませ

中国における薬物の応用の歴史は非常に古く、独特の理論体系と応用形式をもつに至っており、現在では伝統的な使用薬物を「中薬」とよんでいます。

中薬では草根木皮といわれる植物薬が大多数を占めるところから、伝統的に薬物学のことを「本草学」と称しており、近年は「中薬学」と名づけています。

中薬学は、中薬の性味・帰経・効能・応用・炮製・基原などの知識と経験に関する一学科であり、中医学における治療の重要な手段のひとつとして不可分の構成部分をなしています。

【大分類】瀉下剤…排便を促す中薬です。
【中分類】潤下薬…腸を潤して下す作用の中薬です。

キャッチコピー腸燥便秘に最も良い

【学名】…アサ Cannabis sativa Linne

【別名】…火麻仁・大麻仁・麻仁・大麻・マリファナ

 概要

虚弱者の各臓腑の生理的水分不足を緩慢に調えます。

●大麻・マリファナは不法なドラッグとみなされていますが、重要な生薬でもあります。

●アメリカを除く多くの地域で、法の認可のもと、緑内障、多発性硬化症、癌をはじめ、様々な病気に他の治療法と併用して利用されています。

●中国では、大麻の種子は緩下剤(潤燥便秘)として利用されています。


大麻の分類

日本に野生する大麻はアサCannabis sativa L.であり、「大麻草」ともいわれます。

これに類似した植物はCannabis indica Lam.で和名として「インドアサ」と呼ばれています。日本ではアサの亜種とされることも多いのですが、欧米では独立種として扱われることが多いようです。

葉の形式の違い 葉の形は図1に示すように異なりますが、幼植物の頃はSativa種もIndica種に近いことがあります。

出が暇種の樹形は成長すると写真1に示すように、4mにも達するものもありますが、Indica種は通常は室内でも栽培できる程、成長しても大きくはなりませんよ!。

両者はクワ科に属する植物とされていましたが、種子に胚乳があることなどから、現在はアサ科として区別しています。

その用途は薬剤師には切っても切れないものがあります。種子は古くから麻子仁(マシニン)として麻子仁丸、炙甘草湯(シャカンゾウトウ)などの漢方薬原料、あるいは緩下薬として使用されてきました。

また、七味唐辛子などの食用、小鳥の飼料、製油原料としての用途もあります。

しかし国内で種子を生産している農家はなく、中国からの輸入に頼っているのが現状です。

また、茎は繊維である麻織物の原料として用いられていますね!。


 生薬生産地

中国地図 【中国産地】…四川省、雲南省
日本産無



 伝統的薬能

薬物の治療効果と密接に関係する薬性理論(四気五味・昇降浮沈・帰経・有毒と無毒・配合・禁忌)の柱となるのが次に掲げる「性・味・帰経」です。

【温寒】… 平
※性:中薬はその性質によって「寒・涼・平・熱・温」に分かれます。例えぱ、患者の熱を抑える作用のある生薬の性は寒(涼)性であり、冷えの症状を改善する生薬の性は熱(温)性です。寒性涼性の生薬は体を冷やし、消炎・鎮静作用があり、熱性温性の生薬は体を温め、興奮作用があります。

生薬中薬)の性質と関連する病証
性質作用対象となる病証

寒/涼

熱を下げる。火邪を取り除く。毒素を取り除く。

熱証陽証陰虚証。

熱/温

体内を温める。寒邪を追い出す。陽を強める。

寒証陰証陽虚証。

熱を取り除き、内部を温める2つの作用をより穏やかに行う。

すべての病証。

 【補瀉】… 平  【潤燥】…  【升降】…  【散収】… 平
【帰経】…脾・胃・大腸
帰経とは中薬が身体のどの部位(臓腑経絡)に作用するかを示すものです。

【薬味】…甘  まず脾に入ります。
※味とは中薬の味覚のことで「辛・酸・甘・鹸・苦・淡」の6種類に分かれます。この上位5つの味は五臓(内臓)とも関連があり、次のような性質があります。
生薬中薬)の味と関連する病証
 味作用対象となる病証対象五臓

辛(辛味)

消散する/移動させる。体を温め、発散作用。

外証。風証。気滞証。血瘀証。

肺に作用。

酸(酸味)すっぱい。渋い。

縮小させる(収縮・固渋作用)。

虚に起因する発汗。虚に起因する出血。慢性的な下痢。尿失禁。

肝に作用。

甘(甘味)

補う。解毒する。軽減する。薬能の調整。緊張緩和・滋養強壮作用。

陰虚。陽虚。気虚。

脾に作用。

鹹(塩味)塩辛い。

軟化と排除。大腸を滑らかにする。しこりを和らげる軟化作用。

リンパ系その他のシステムが戦っているときの腫れ。

腎に作用。

苦(苦味)

上逆する気を戻す。湿邪を乾燥させる。気血の働きを活性化させる。熱をとって固める作用。

咳・嘔吐・停滞が原因の便秘。排尿障害。水湿証。肺気の停滞に起因する咳。血瘀証。

心に作用。

淡(淡味)

利尿。

水湿証。

【薬効】…潤腸作用  瀉下作用  血糖降下作用 

【薬理作用】…最も緩和な瀉下薬で、老人や虚弱者に適します。血糖降下作用もあります。

【用途】…緩下薬として、老人、子供、妊産婦など体力の消耗した人、或いは病後の大便秘結して下してはならない人に用いる。

【学名】…アサ Cannabis sativa Linne

【禁忌】…下痢の場合は使用しないこと。

【注意】…都薬雑誌2014/Vol.36 あぶない植物 第2回 バイオタイプの大麻
安田一郎 より抜粋

バイオタイプ大麻

乱用薬物 「バイオタイプの大麻」とは、海外で乱用薬物として社会問題となっている植物は、1980年頃からバイオ技術によって登場した新しい品種で、野生種ではありません。

品種改良の進んだバイオタイプの植物で、テトラヒドロカンナビノール(THC、図2)含量の高い植物群です。

なお、日本では発芽可能な種子を海外から持ち帰ったり、個人輸入すると、「麻薬の密輸と同じ関税法違反」になります。

大麻に含まれるTHC

THCは強い幻覚作用や陶酔感、多幸感を生じる向精神薬で、日本では麻薬及び向精神薬取締法により麻薬として規制されています。植物は大麻取締法で規制されているので、薬物取締上はやや複雑です。

東京薬科大学の藤田路一教授の研究室では厚生省麻薬課の研究委託を受け、大麻植物の組織培養研究が進められていました。

植物の培養組織を用いてTHCを、大量に生産しようという試みでしたが、培養組織では酸化酵素が強く、THC産生能は得られませんでした。

植物中では2位に-COOHが付加した△9-THC-acidも存在しますが、乾燥により容易に△9-THCに変化するので、総量をTHC量として表記するのが一般的です。

その時用いた母植物Sativa種のTHC含量が1.0%であったことを記憶しています。今英国などで問題としているスカンクに代表されるバイオタイプ種の含量は概ね10%以上です。

日本などに自生する大麻葉の乾燥物には、幻覚作用のないカンナビジオール(CBD、図2)を主成分とし、他にカンナビゲロール(CBG、図2)、カンナピノールが含まれています。

バイオ技術によって品種改良の進んだバイオタイプ種の分析結果は、オランダ・アムステルダム市内などのヘッドショップ(大麻販売店)で、種子のカタログに記載されたデータとして観ることができます。

ガスクロマトグラフィー分析 分析方法としては図3に示すようなガスクロマトグラフィー分析(GC)もあれば、薄層クロマトグラフィー分析もあります。

いずれにしても、これらバイオタイプ種はCBD及びCBGが少なくTHCが多いことが特徴です。

図3はWHITEWIDOWのGC分析結果で、THC16.6%を含有していますが、CBD、CBGはほとんど含まれていません。

室内栽培に用いられるバイオタイプ種

雌雄異株 大麻は雌雄異株です。乱用薬物として主に使用されるのは雌株であり、開花時の花(写真2)あるいは腺毛を多く含んだ葉の部分が用いられます。

腺毛の先端から出る腺液に、分泌物であるTHCが多量に含まれています 1)。

アムステルダム市内には、大麻種子の販売店が多数ありますが、バイオタイプの種子は1粒5~7ユ一口(約1ユ一口=129円)で、最低3粒から販売されています。

バイオ種 写真3に掲げるバイオ種はいずれもSativa種あるいはIndica種の品種改良されたもので、雌株です。しかし種子を付けることはなく、クローン化されているので、品質は一定しています。

腺毛の多い雌花周辺のTHC含量は20%に及ぶ品種もあるといわれています。

これらの中には成長しても背丈が80cm以下、横に枝が伸びる室内栽培向けの品種もあり、「押入れ栽培の大麻」として日本で話題になったものもあります。

このようなバイオ技術は米国、オランダで開発されました 1)。

雄花 一方、雄花(写真4)は室内栽培ではほとんど見られません。野外で繊維用に栽培されている植物に見ることがあります。

雄花から飛ぶ花粉は2kmにも及ぶといわれています。

各国の大麻の規制状況

各国の大麻あるいはバイオタイプ種の規制状況を調べてみました。

●オランダ:
オランダ旗 薬物をハードドラッグとソフトドラッグに2分し、大麻は規制の緩いソフトドラッグと位置付けています。
コーヒーショップ(大麻喫煙所)では18歳以上であることを確認しますが、一方THCを15%以上含有するバイオタイプ種の喫煙は禁止されています。
ただし種子に関しては写真3に示すように自由に販売されています。

●英国:
英国旗 乱用薬物はA、B、Cの3クラスに分け規制しています。大麻は2004年まではBクラスで、アンフェタミンと同じクラスでしたが、一度Cクラスにランクを下げています。
販売量 しかし2007年頃からスカンクに代表されるバイオタイプ種の販売量が、表に示すように、英国内で急増しました。健康被害が多発したことから、英国政府は2009年に再度Bクラスに格上げし、規制を厳しくしています。
その結果バイオタイプ種の販売量は一時的に減少しました。しかし1年もすると増大しています。
その一方、2009年当時は、大麻と同じ様に使用する新規薬物合成カンナビノイド(スパイス、日本では脱法ハーブとして流通)が、英国内の若者の間で流行しています。
これも現在はBクラスの薬物として規制対象になっています。

●ドイツ:
ドイツ旗 大麻所持は違法であり、罰金および禁固刑で罰せられますが、個人使用量程度の所持・栽培は起訴に当たらないとされています。
バイオタイプ種に対する規制も特にありません。

●イスラム諸国:
古くから民族儀式に大麻の幻覚を利用した儀式や占いが行われ、古代ペルシャ医学では、外科手術に麻酔薬としても利用されてきました。
しかし現在は、コーランにより大麻の使用は厳禁され、所持・売買の最高刑は死刑としている国も多いといわれています。

●中国:
中国旗 大麻の規制は麻薬の規制と同程度で、50gを超える量を販売すると、死刑になるなど規制は厳しいものです。

●米国:
米国旗 連邦法では全面的に禁止されていますが、コロンビア州、ワシントン州では住民投票によって、嗜好品として、21歳以上の住民であれば28.5g(1オンス)まで所持・使用が認められることになりました。
バイオタイプ種が特に禁止されることもないようです。

●ウルグアイ:
ウルグアイ旗 2014年後半から事前登録した18歳以上の国内居住者は、月40gまで大麻購入が可能となり、自家栽培も6株まで認められることになりました。
大麻取締に悩む政府が、規制を緩め治安改善を図るもので、大麻撲滅の難しさを物語っています。

THCによる健康被害

バイオタイプ種は従来の大麻に比べ、短時間でリラックスしたり、陽気になったり、不安になったりするもので、その作用は2~3倍強くなったといわれています。

海外ニュースでは、バイオタイプ種を服用し、妄想を覚えた若い女性が高電圧送電塔に登り、その救出劇が報道されています。

THC摂取は、副作用としてうつ状態や不安状態を強く出現します。総合失調症などの精神症を患う確率が高くなることは、疫学的に証明されています。

しかし高濃度のTHCの生体への直接的な影響などは、まだ十分に解明されているとはいえません。
ウォッカ その一方で、写真5に示すように、大麻抽出物を食品に入れたり、ウォッカ、ビールなどの飲料に入れたりする文化も国外にはあります。

大麻に関する海外情報も正しく理解しておくことが必要です。

参考文献

1)United Nations Office on Drugs and Crime. World Drug Report 2013.

●日本薬局方
【出典】…神農本草経
【三品分類(中国古代の分類)】… 神農本草経や名医別録などでの生薬分類法
上品(不老長生薬)


 生薬の画像

【基原(素材)】…クワ科 Moraceaeアサの種子(成熟果仁)です。

麻子仁の植物画像


麻子仁の葉っぱ画像(大麻草)


麻子仁の種子の画像


麻子仁の植物画像2


麻子仁の植物画像3


麻子仁の植物画像4


大麻農家を訪問した昭和天皇


麻子仁の葉っぱ画像(インドアサ)



ツムラ漢方薬一覧へ

 方剤リンク

本中薬(麻子仁)を使用している方剤へのリンクは次のとおりです。関連リンク


  関連処方炙甘草湯 »
  関連処方潤腸湯 »
  関連処方麻子仁丸 »
  関連処方潤腸丸 »


生薬 生薬は、薬草を現代医学により分析し、効果があると確認された有効成分を利用する薬です。 生薬のほとんどは「日本薬局方」に薬として載せられているので、医師が保険のきく薬として処方する場合もあります。


中薬・中成薬 中薬は、本場中国における漢方薬の呼び名です。薬草単体で使用するときを中薬、複数組み合わせるときは、方剤と呼び分けることもあります。
本来中薬は、患者個人の証に合わせて成分を調整して作るものですが、方剤の処方を前もって作成した錠剤や液剤が数多く発売されています。これらは、中成薬と呼ばれています。 従って、中国の中成薬と日本の漢方エキス剤は、ほぼ同様な医薬品といえます。


 詳細

当帰(カラトウキ)と配合し、エネルギーや体液不足にしばしば関連する出産後の女性や高齢者の便秘の治療に使用します。

●種子は、麻子仁丸によく用いられます。この丸薬の名前は大麻のもう一つの中国名、麻子仁にちなんでつけられています。
●アメリカでは、大麻を栽培、所有、あるいは使用することは不法です。
●生薬を扱う店は、栽培されることがないよう湯に通した大麻の種を販売しています。


 備考

大麻はアサ科の1年草で、雌雄異株の双子葉植物であり、成長すると約110日間で高さ3~4mに達し、茎の直径は2~3cmとなります。

古くは縄文時代の鳥浜遺跡(約1万年前)から大麻繊維や種子が発見されています。
大麻の繊維は織物のほかに、畳表の縦糸、魚網や釣り糸、蚊帳、下駄の鼻緒などに使われていました。

さらに繊維を取った後の苧殻(おがら)は、松明やカイロ灰の原料に使われ、種子は食用、灯り用の油として、根や葉は薬用として利用されていました。



 日本で「大麻」が禁止薬物になった理由を解説

麻 日本人は、稲作より古い1万年以上前から大麻という「農作物」を衣食住に利用してきた。繊維を布や魚網に加工し、茎を屋根材に、種子(麻の実)を食用に、葉を薬に用いるなど、ほんの70年ほど前まで、大麻は日本人にとって非常に身近な存在だったのです。


大麻は、なぜ日本で禁止薬物になったのか? その意外な歴史背景を、書籍『日本人のための大麻の教科書「古くて新しい農作物」の再発見』より一部抜粋・再構成してお届けします。


明治時代以降、海外産の繊維の輸入が増えるに従って、国内産の大麻の生産量は落ち続けていました。しかし、政府は1942年に原麻生産協会を設立し、麻類の増産奨励を行っています。長野県大麻協会が発行した『大麻のあゆみ』には、太平洋戦争当時、全生産量の90%が軍需用だったと記録されています。


GHQ 敗戦後の1945年、日本はポツダム宣言を受諾し、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の占領下に置かれました。アメリカ軍が主体となったGHQが日本を占領したため、GHQには米軍の印象が強いのですが、本来は11カ国で構成された極東委員会の決定を遂行する機関でした。


日本初の「大麻取扱事件の摘発者」とは?

同年10月12日、GHQは「日本に於ける麻薬製品および記録の管理に関する件」という覚書(メモランダム)を発行しました。麻薬の定義は「あへん、コカイン、モルヒネ、ヘロイン、マリファナ(カンナビス・サティバ・エル)、それらの種子と草木、いかなる形であれ、それらから派生したあらゆる薬物、あらゆる化合物あるいは製剤を含む」とされ、当時の厚生省はこの指令に基づき11月24日、厚生省令第四六号「麻薬原料植物の栽培、麻薬の製造、輸入及輸出等禁止に関する件」を交付しました。


しかし、日本人はこの時点でもまだ戦前と同様、「マリファナとはインド大麻(※1930年に制定された麻薬取締規則において、日本の大麻(繊維型)と区別するために、海外の大麻(薬用型)が「インド大麻」として規制された)のことであり、農作物としての大麻は無関係である」と考えていました。そのため1946年春から夏にかけて、例年どおりに大麻の栽培は行われていました。


ところが、1946年にある事件が起こります。GHQの京都軍政部により、京都府で栽培されていた大麻が発見され、農家2名を含む4名の民間人がGHQの命令違反で検挙されたのです。不運にも、彼らが日本の大麻取扱事件の初の摘発者となりました。


京都府は麻薬採取の目的ではなかったことを訴え、京都大学薬学科、刈米・木村両博士の鑑定書を添付し、インド大麻ではないことを証明しようとしました。しかし、関係者の努力は実らず、「その栽培の目的如何にかかわらず、また麻薬含有の多少を問はず、その栽培を禁止し、種子を含めて本植物を絶滅せよ」との命令が下されたのです。


占領期とはいえ、「植物を絶滅せよ」という命令は常軌を逸しているとしか思えません。この状況を放置しておけば、衣料や漁網などの生活用品を生産できなくなります。専業の大麻農家も少なくなかったため、数万人規模で農家の困窮が起きます。さらに、大麻の種子はお盆を越すと発芽率が著しく悪くなるため、一年以上この状況が続いて発芽する種子が激減すれば、大麻農業は壊滅的な打撃を受ける危険がありました。


こうした報告を受け、占領下にあった政府はGHQへの事情説明と折衝を続けました。農林省は1946年11月に農政局長名で、終戦連絡事務局(GHQとの折衝を担当する機関)に大麻の栽培許可を要望しています。全面的な禁止を回避し、「農作物としての大麻」を守ろうとしたのです。


国を挙げての再三にわたる折衝の結果、1947年2月、連合軍総司令官より「繊維の採取を目的とする大麻の栽培に関する件」という覚書が出され、一定の制約条件の下、大麻栽培が許可されました。制約とは、栽培許可面積を全国で5000町歩とし、栽培許可県を青森、岩手、福島、栃木、群馬、新潟、長野、島根、広島、熊本、大分、宮崎県に限るというものです。


このときに初めて、日本の大麻を規制する厚生・農林省令第一号「大麻取締規則」が制定されたのです。法制定に関わった元内閣法制局長官の林修三氏はのちの1965年「時の法令530号」で、「先方は、黒人の兵隊などが大麻から作った麻薬を好むので、ということであったが、私どもは、なにかのまちがいではないかとすら思ったものである」と語っているほどです。


昭和天皇と大麻

1947年9月、昭和天皇が栃木県国府村(現・栃木市国府町)を訪問されています。「国府村農協組合にて大麻製造御高覧」という説明文がついた写真が残っていますが、ご訪問の真意はわかっていません。国府町で伺った話によると、大麻農業の存続を危惧して動揺する農民たちを、「これからも大麻はつくれるから、安心してください」と励ますためだったとされています。


大麻農家を訪問した際の昭和天皇 栃木県の大麻農家を訪問した際の昭和天皇(出典:『日本人のための大麻の教科書 「古くて新しい農作物」の再発見』より)



生物学者であり、植物にも造詣が深かった昭和天皇の有名な言葉に「雑草という草はない。どんな植物でも、みな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる。人間の一方的な考え方でこれを雑草と決めつけてしまうのはいけない」というものがあります。占領下におけるGHQの命令に、心を痛めておられたのではないでしょうか。


その後、大麻の取り締まりを強化するため、前年までの取締規則を法制化するようGHQから要請があり、1948年7月10日に「大麻取締法」が制定されました。同時に「麻薬取締法」が制定されましたが、これは農家が取り扱う従来の農作物としての大麻と、医師などが取り扱う麻薬類を分けるための措置でした。


この法律の最も大きな問題と考えられる点を紹介します。それは、通常の法律は「総則」の冒頭に制定の「目的」が書かれるのですが、なぜか大麻取締法にはこの目的が書かれていないまま70年以上が経過しているという点です。


このため、そもそも農家を保護するための苦肉の策だったものが、いつの間にか大麻事犯を取り締まる法律へと変化しているのです。


マリファナ喫煙 また、日本が主権を回復した際には、大麻取締法の廃止が前提条件となっていました。1952年、サンフランシスコ講和条約が発効され、日本の主権が回復し、占領時の法制について再検討が行われます。大麻取締法の廃止は優先順位が高く、内閣法制局は少なくとも栽培免許制の廃止を行うよう働きかけました。厚生省も同様に取締法の廃止の必要性を認めていたものの、決定には至らず、見送られることになったのです。


ここまで、大麻取締法が制定されるまでの流れを時系列で追いかけました。強調しておきますが、大麻取締法は本来、「農作物としての大麻」を守り抜こうとした結果でもあるのです。


大麻取締法が制定された1948年、大麻栽培の免許取得者数は2万3902人でした。その数は意外なことに年々増加し、1954年には3万7313人となっています。増加の要因は戦後の復興需要に伴うもので、1950年に発行された『実験麻類栽培新編』によると、当時の大麻繊維の利用先は下駄の芯縄52%、畳経糸32%、漁網12%、荷縄4%でした。


ターニングポイントは「1961年」の国連条約

しかし、1954年を境に免許取得者は減少に転じ、1964年には7042人、1974年には1378人まで激減。その要因は高度経済成長期の生活スタイルの急激な変化です。化学繊維の普及も進んだことから、それまでは大麻でなければ担えなかった需要が、急速に失われていったのです。


また、この間の国際的な動きに、1961年に国連が採択した「麻薬に関する単一条約」があります。この条約で大麻が指定されたことから、世界的に大麻への規制圧力が高まりました。日本がこれまでに大麻取締法を廃止できなかった大きな理由は、この条約にあります。


マリファナ喫煙 農作物としての需要が激減するなか、1960年代には欧米を中心にベトナム戦争への反対運動などを契機としたヒッピー文化が隆盛し、マリファナ喫煙が流行しました。その影響は大麻を喫煙する習慣がなかった日本にも波及しました。


大麻農業の保護を目的として制定された大麻取締法はいつの間にか「違法な薬物」を取り締まるための法律として機能するようになりました。そして、農作物という側面が忘れ去られた大麻は「ダメ。ゼッタイ。」な存在へと変わっていったのです。


生薬陳列

 生薬の書物の歴史

1.【神農本草経】(西暦112年)
中医薬学の基礎となった書物です。植物薬252種、動物薬67種、鉱物薬46種の合計365種に関する効能と使用方法が記載されています。
神農本草経

神農神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂 »に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。



2.【本草経集注】(西暦500年頃)
斉代の500年頃に著された陶弘景(とうこうけい)の『本草経集注(しっちゅう)』です。掲載する生薬の数は、『神農本草経』(112年)の2倍に増えました。 本草経集注(しっちゅう)
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)

陶弘景(456~536年)は、中国南北朝時代(420~589年)の文人、思想家、医学者です。江蘇省句容県の人です。茅山という山中に隠棲し、陰陽五行、山川地理、天文気象にも精通しており、国の吉凶や、祭祀、討伐などの大事が起こると、朝廷が人を遣わして陶弘景に教えを請いました。
そのために山中宰相と呼ばれました。庭に松を植える風習は陶弘景からはじまり、松風の音をこよなく愛したものも陶弘景が最初です。
風が吹くと喜び勇んで庭に下り立ち、松風の音に耳をかたむける陶弘景の姿はまさに仙人として人々の目に映ったことでしょう。



3.【本草項目】(西暦1578年)
30年近い歳月を費やして明代の1578年に完成された李時珍(りじちん)の『本草項目』です。掲載する生薬の数は、約1900種に増えました。
『本草綱目』は、1590年代に金陵(南京)で出版され、その後も版を重ねました。わが国でも、徳川家康が愛読したほか、薬物学の基本文献として尊重され、小野蘭山陵『本草綱目啓蒙』など多くの注釈書、研究書が著されています。
本草綱目は日本などの周辺諸国のみならず、ラテン語などのヨーロッパ語にも訳されて、世界の博物学・本草学に大きな影響を与えています。
本草項目
儒者・林羅山(1583~1657年)の旧蔵書

李時珍 李時珍(1518~1593年)は、中国明時代(1368~1644年)の中国・明の医師で本草学者。中国本草学の集大成とも呼ぶべき『本草綱目』や奇経や脉診の解説書である『瀕湖脉学』、『奇経八脉考』を著した。
湖北省圻春県圻州鎮の医家の生まれです。科挙の郷試に失敗し、家にあって古来の漢方薬学書を研究しました。30歳頃からあきたらくなって各地を旅行し調査したり文献を集めたりはじめます。ついに自分の研究成果や新しい分類法を加え、30年の間に3度書き改めて、1578年<万暦6年>『本草綱目』を著して、中国本草学を確立させました。
関連処方李時珍、生家にて »



4.【中医臨床のための中薬学】(西暦1992年)
現在、私が使用している本草の辞典です。生薬の記載個数は、約2,700種に増えました。
神戸中医学研究会の編著です。
中医臨床のための中薬学


区切り
ハル薬局

【薬用部分】…種

 成分

脂質 Lipids:

テルペノイド(精油) Terpenoids (Essential oils): カンナビノイド Cannabinoids:
C. sativa var. indicaの葉の腺毛: Cannabidiol, Tetrahydrocannabinol

ビタミンE (トコフェロール類) Vitamin E (Tocopherols):

ペプチド Peptide:


【中国での一般的服用量】…9~30g


道教・八卦 人参

TOP