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概 要

●この方は鼓脹・腹水・浮腫の虚証に対して、ときに妙効を発揮することがあります。
●主として浮腫・腹水・鼓脹・肝硬変症・慢性腹膜炎・慢性腎炎・ネフローゼ・心臓弁膜症による浮腫等に応用されます。

こんな方に

腹水の方

主 治

鼓脹・腹水・浮腫の虚証

適応症

浮腫・腹水・鼓脹・肝硬変症・慢性腹膜炎・慢性腎炎・ネフローゼ・心臓弁膜症による浮腫等

診断のポイント

●鼓脹
●腹水
●浮腫(むくみ)

出典書籍

出典書籍 (source)
西暦1253年 南宋時代 『済生方』 厳用和 《厳氏済生方》ともいう。10巻。中風、中寒などと、内・外・婦人科など79篇で、先ず病候を述べ後に方剤を記している。作者が試用し有効だった450余首が選録されている。→処方使用期間:754年間


処方別・製品一覧

医薬品個人輸入 説明表示をクリック(タップ)→説明表示 いらっしゃいませ 医療用漢方薬

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小太郎漢方製薬小太郎漢方製薬 » ≪医薬品≫ 漢方製剤No:D050
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中医学の証・解説

次の症状のいくつかある方は、本方剤が良く効く可能性が大きいです。

補気建中湯 朱雀:四神の獣・南方の守護神

八 法

補法:気血陰陽あるいは臓腑の虚損を補養する治法です。

【中薬大分類】補益剤…正気を補う方剤です。補益薬を主体にして正気の不足である虚証を改善する方剤です。扶正剤・補剤ともいいます。

【中薬中分類】補気剤…気を補う方剤です。気虚を改善する方剤です。益気剤ともいいます。

八綱分類

裏熱虚(りねつきょ) 裏 熱 熱 虚 …証(体質・症状)が、裏証(慢性症状)、熱証(わずかに熱証)、虚証(実から虚弱へ)、の方に適応します。


使用目標(aim)

本方剤の適応する使用目標は次のとおりです。
●実腫のときには柴苓湯・分消湯・五苓湯・木防已湯等を用いるが、本方は、それらの適応時期を過ぎ、虚証となり、元気衰えたものに用いる。
●あるいは小建中傷・補中益気湯等の甘味剤を与えてかえって浮腫が増加した場合などにはこの方がよい。浮腫は力なくブヨブヨで、圧迫による陥没がなかなか元に戻らない。


症例・病例・治癒例・case study(case study)

【補気建中湯の症例・治例】…次の症例に近い病症の方は、本方剤をお奨めします。

1〈胆嚢炎後の肝腫大と鼓脹〉

治例図 75歳の老人。

2年間心下部の痙攣様疼痛と、悪寒戦慄、高熱40度をしばしば繰り返し、病名がわからなかったが、黄疸を発し、大豆大の結石が大便から検出されて、胆石疝痛によるものであることがわかった。

ところが結石は出たが、心下部の疼痛はなお去らず、腹部膨満し、下肢にも浮腫を現わし、腹水著明となり足背・陰嚢・包皮にまで及んでしまった。食欲は全くなく、衰弱加わり、尿量は700~800㏄程度で、黄褐色である。口舌は乾燥して白苔がある。肝臓癌の疑いがあって、主治医も家人も本人も半ば観念しているという。黄疸をともなった腹水であるので、小柴胡湯合分消湯を与えた。五日間服用すると、浮腫はますます加わり、腹部は張りさけるばかりであった。

これは虚腫であると思いなおして補気健中湯に転方したところ、翌日より急速に尿量増加し、2000~2500㏄となり、一週間にして浮腫はほとんど消失し、食欲が出て黄疸も去り、すっかり元気づき、2ヶ月後には外来で私の診察室に現われるまでによくなった。以後すっかり健康体となり、82歳まで長命を保っていたが、脳溢血で急逝したという便りを受け取った。

弁証論治 リンク鼓脹・腹水・浮腫の虚証 »

・現代病名:胆嚢炎後の肝腫大と鼓脹

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2〈腹水〉

治例図 53歳男性。

アルコール性の肝硬変を患い利尿剤を服用していましたが、服用中止後1週間で腹水が溜まるようになりました。

補気建中湯と菌陳五苓散を10日分(1日1回)渡して服用していただきました。服用して2日目から、お小水が大量に出るようになりお腹の張りも引いてきました。現在も継続服用中です。

・現代病名:腹水

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3〈胸水〉

治例図 74歳女性。

身長165cm、体重56kg。中肉で顔色は青白い。平成18年に胃がんで胃の3分の2を切除。その後腹膜に転移し、胸水が溜まり来店。食欲はなく胸は圧迫感があり苦しい。便は硬く、腹は膨満感があります。

胸水を取るために補気建中湯と麻杏甘石湯3分の1量を1ヵ月間服用。

今までは1日100cc溜まるので抜いていましたが、服用してからは溜まらなくなり経過良好。現在も継続服用中です。

・現代病名:胸水

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4〈両足のむくみ〉

治例図 63歳女性。

身長155cm、体重62㎏。膠原病(全身性エリトマトーデス)を患っている方です。両足にむくみがあり、ご相談に来られました。顔色は赤黒く、目は充血しています。めまいがして、疲労倦怠感、盗汗があり、胸苦しく、軽い咳が出ます。排便回数は少ないです。お小水は出にくく残尿感があります。

補気建中湯の1日分6gを食後3回に分けて服用していただいたところ、5日目くらいから、お小水が良く出るようになり、むくみが減り体調が良くなりました。現在も継続服用中です。

・現代病名:両足のむくみ

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5〈むくみ〉

治例図 100歳女性。

足、身体全体にむくみがあります。ご高齢という事もあり、気虚の証と判断し、補中益気湯を勧めて1日1包を10日間服用していただいたが悪化してしまいました。

そこで補気建中湯に変方して、1日1包を10日間服用していただきました。

服用後すぐに、むくみの症状がとれたと喜ばれました。

・現代病名:むくみ

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6〈むくみ〉

治例図 50歳男性。 体格は中肉中背です。胃内停水があり、体内のむくみが身体の上部へ上昇して顔が赤くなった感じがする方です。足の裏は汗をかいてベタベタになります。症状は以前からありましたが、ストレスで急にひどくなったと来店されました。本人がおっしゃるには、「水分はあまり摂らず夏でも500mlのペットボトル1本分も飲まない」との事です。舌は真っ白で、歯の痕があり、胃の冷えもあります。

補気建中湯1日分を服用しました。翌日再び来店されました。「あんな気持ちのいい薬はない」と驚かれました。尿の出がとてもよくなったとの事で、顔が明らかにすっきりとしていました。就寝前にもかなり尿が出るが、夜間の排尿はないとの事です。

同時に左腕(ひじから先)のしびれが取れてきて、指先に少し残っている程度になりました。満足されたので、1日分を購入されました。その後も体内に水分がたまってくると来店され購入していかれます。

・現代病名:むくみ

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7〈むくみ、倦怠感〉

治例図 56歳男性。

ネフローゼ症候群を患っている方で、身体が重だるく、少し気だるいとの事で相談に来られた。尿不利と浮腫以外特徴がないので、補気建中湯を2週間服用していただいた。

尿の量が多くなり、重だるさも、気だるさも良くなったとの事です。補気建中湯は腎虚の利水剤として使用したらよいと考えられます。

・現代病名:むくみ、倦怠感

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8〈風邪を引いた後の倦怠感〉

治例図 38歳女性。

身長170cm、体重56㎏です。風邪を引いた後など、体調が悪くなると、気だるさと疲労感が強いと相談に来られました。

気だるい時は、身体がむくんでいるようで重く感じており、水分代謝が悪いようなので補気建中湯を勧めました。

5日ほど服用すると、お小水の量の変化はわからないが、むくみ、疲労感が取れ、自然に回復していると自覚できたようです。

・現代病名:風邪を引いた後の倦怠感

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組成成分

各生薬の詳細説明にリンクします。
茯苓  白朮  陳皮  蒼朮  人参  沢瀉  麦門冬  黄芩  厚朴 

補気建中湯の中薬一覧(herb list)
生薬名(herb name) 薬量(quantity) 君臣佐使(role) 大分類 中分類

茯苓 »

5

佐薬

利水滲湿薬

白朮 »

4

臣薬

補虚薬

補気薬

陳皮 »

3

理気薬(行気薬)

蒼朮 »

3

芳香化湿薬

人参 »

3

補虚薬

補気薬

沢瀉 »

3

利水滲湿薬

麦門冬 »

3

君薬

補虚薬

補陰薬

黄芩 »

2

佐薬

清熱剤

清熱燥湿薬

厚朴 »

2

臣薬

芳香化湿薬

・君薬…方剤配合中の主薬で、症状に対して主に作用する薬物です。
・臣薬…主薬を補助して主薬の効き目を強化する薬物です。
・佐薬…主薬に協力して二次的な症状を取り除くか、または主薬を制御し、主薬による副作用を抑えるか防ぐ薬物です。
・使薬…方剤の中では二次的な薬物か、引経(薬物を病のある場所まで引率していく作用)の薬物です。

中薬構成(herb composition)

神農

本方は四君子湯と平胃散とを合方して甘草を去り、黄苓・沢瀉・麦門冬を加えたもので、虚の中にわずかに実熱がある。人参・白朮・茯苓は四君子湯より甘草を去ったもので、脾胃を補い、胃の力をつける。

甘草を去るのは甘草は水分をたくわえる作用があるからである。蒼朮・厚朴・陳皮は平胃散より甘草を去ったもので、胃内の停水を去るものである。黄芩は内熱を去り、沢瀉・麦門冬ともに利尿の効がすぐれ、白朮・茯苓・蒼朮と組んで水をめぐらす。厚朴は気をめぐらすものである。


神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。

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処方画像

腹水 【補気建中湯の使い方】
水分代謝の働きが正常に機能しないために腹部や全身にたまった水の治療には、通常、西洋医学の利尿剤を用いて治療することができますが、病気で体力が落ちて虚弱になった患者には、あまり適していません。
そのような時に処方されるのが補気建中湯です。
これは、胃腸虚弱、体力低下、浮腫や腹水などによる腹部膨満感、食欲減退、疲労倦怠を強く訴える方に適しています。

腹水を起こす疾患には、難治性のガンや肝臓疾患などがありますが、補気建中湯でそのような疾患が簡単に完治するというものではなく、つらい腹水をとることで、患者の苦痛を和らげ、生活の質を高めることができるというものです。
補気建中湯を内服することによって腹水を改善することで、急激な体力低下を防ぎ、病気と闘う体力や気力を蘇らせるという大きな意味合いを持つのです。

補気建中湯の有効成分ですが、他の漢方と同様にすべて自然由来のものから成り立っています。
その中のいくつかを紹介すると、人参には造血作用や胃酸を増加させる作用、人参と白朮(びゃくじゅつ:キク科)には胃腸機能を改善して活力を補う作用、また白朮(びゃくじゅつ)と茯苓(ぶくりょう)には消化管、筋肉、関節、組織間などにある過剰な水分を血中へ移動させて利尿する作用があります。

また、浮腫には、指で押したらすぐに元に戻る弾力性のあるものとそうでないものがあり、前者を実腫、後者を偽腫と呼びます。
同じ漢方である「分消湯」が実腫に効果を発揮して偽腫にはあまり効果が発揮されないのに対して、この補気建中湯は後者の偽腫にも効果が期待できます。


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「次郎物語」の著者:下村湖人 補気建中湯の変方である医林集要の補中治湿湯(ほちゅうじしつとう)は、本方より沢瀉・白朮を去り、当帰・木通・升麻を加えたものである。

升麻を加えるとその苦味をきらうものが多い。減量するか、去って用いてもよい。

「次郎物語」の著者:下村湖人は、ひどい浮腫と腹水に苦しんだ。請われて補中治湿湯を与えたが、この升麻の苦味をきらって薬を飲まず中止し、間もなく他界(脳軟化症と老衰による)された。

中田敬吾氏外、ネフローゼ症候群(日東洋医会誌二九巻一号)


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備 考(Remark)

中医師 補気建中湯(ほきけんちゅうとう)は、肝硬変、腹膜炎、腎炎、ネフローゼ、心臓疾患、慢性下痢症などに伴う腹水や浮腫の治療に用いられる漢方薬の一種です。

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