【 ゼンタイ 】
 『本草綱目』で、李時珍は「頭風眩暈、皮膚の風熱、痘疹の癢きもの、破傷風及び腫毒瘡、大人の失音を治す」と言及。『名医別録』では“枯Z・腹#”“Z殻”を原名とし、「小児の驚癇、産婦の子の下らぬものを治す・・」との記載がある。中国では“Z蛻”の名称が通ずるが、蘇頌は“Z殻”、寇宗%は“$Z”など、また省によってもZ退(河北省、陝西省、浙江省)、Z衣(江蘇省、浙江省)、Z殻(浙江省、遼寧省)、など地域的に種々の呼称があり、セミの種類も多い。しかし、ぬけがらとしての内容的変化はない。一般的にはスジアカクマゼミCryptotympana pustulata Fabriciusを主体にその他近縁のセミがあるものと考える。そしてその幼虫のぬけがらを生薬とする。全形は長楕円体、中空でやや湾曲、頭部、胸部、腹部からなり、長さ3〜4cm、幅1〜2cm、表面淡黄褐色、半透明で光沢がある。頭部には前方に半球形の頭、針形の口吻、両側に偏球形の透明な2個の複眼、腹面に3対の足があり、前脚は鎌状、中脚と後脚は細長い。腹部の背面は9環節からなる。質は軽く、ほとんどにおい、味はない。山東省、河北省、河南省、江蘇省が主産地。

【 ソボク 】
 『本草綱目』で李時珍が「海島に蘇方國といふがあって、その地にこの木を産する。故にかく名けたのだ。今は一般に略稱して蘇木といってゐる。」と解説。インド、タイ地方を原産とし、インド地方には自生が多く、インド、タイ、フィリピン及び中国広西省、雲南省、海南島などで栽植される。我が国へは中国を経て渡来、日本でも染料として用いられた。原植物スオウノキCaesalpinia sappan Linne´は高さ4〜5m、時に10m以上に達する多年生の落葉小高木。生薬の中央部には黄白色の髄及び点状に光る物質が点在、砕片を熱水に投下すると水は紅色に染まる。李時珍は「蘇方木なるものは三陰の經、血分の藥であって、少しく用ゐれば血を和し、多く用ゐれば血を破る」。また、『日華子本草』には「婦人の血気、心腹痛、月経不調、及び蓐労を治す。膿を排し、痛を止め、癰腫、撲損z血を消す。婦人の失音、赤白痢、並びに後分急痛を治す。」と各見解が記述される。血を巡らし、血を散じ、通経、鎮痛の作用がある。婦人血気による心腹痛、月経閉止、産後の血による脹痛喘息などを治す漢方処方に配剤がある。