【 シンイ 】
本州各地、四国、九州、特に日本海側での分布が多く、山地に生える落葉小高木。一般にコブシよりも丈は低いが、高さ10mを越えるものもある。コブシに良く似ているが、コブシは葉が倒卵形〜広披針形、幅3〜8cm、下面は淡緑色で脈上に毛があり、花時、花柄下に1枚の葉片をつける、タムシバは葉が広披針形〜卵状長楕円形、先は細く尖り、基部は鋭い楔形、上面は無毛で下面は粉白色を帯び、若い葉には微毛がある。花時、花柄下に葉がつかない。等が見分け方である。葉面にタムシのような斑が見られる事による語源があり、或いは葉を噛むと甘味、においが感じられ、子供が良く噛む光景からカムシバと呼ぶ方言がある。生薬としては毛筆状を呈するつぼみのうちに収穫して乾燥する。古来の本草書である「大和本草」「重修本草綱目啓蒙」では辛夷としてコブシであることを記述している。また、牧野富太郎先生は“辛夷にコブシを当てるのは奇怪しい、モクレンが本当ではないか”との言及もある。しかし、近年日本での辛夷としての生産は殆どがタムシバで、コブシ、モクレン等を目にすることはない。更に使用量の増加に伴い、市場の流通は中国からの輸入品で中国産基原種の望春花M. biondii pamp.、武当玉蘭M. sprengeri pamp.、玉蘭M. denudata Desr.などが隆盛となっている。単味で用いるよりも鼻炎、蓄膿症等を目標とした漢方方剤に配合される。