対応病症

痺(ひ)
●四肢痛。
行痺(風痺):風邪の症候が主体
●全身の関節の遊走性で多発性の疼痛としびれ・運動障害。
●舌苔:薄白あるいは賦。
●脈:浮。
痛痺(寒痺):寒邪の症候が主体
●寒冷による気血の凝滞があるために、固定性のはげしい関節痛・痛みは温めると楽になり冷えると強くなる・局所の冷感・運動障害。
●舌苔:白滑。
●脈:弦緊。
着痺(湿痺):湿邪の症候が主体

いらっしゃいませ

 弁証分類



◆大分類:病邪弁証


◆中分類:痺(ひ)


八綱分類 裏 寒 寒 熱 熱

 弁証概要

概要

関節リウマチ、変形性膝関節症、腰痛症、坐骨神経痛、多発性神経炎、脊髄炎などによくみられます。痺(ひ)証とは、風、寒、湿などの邪気が経絡や関節を侵し、関節や筋肉の痛み、四肢の脱力やこわばり、運動障害などをもたらすものをいいます。臨床上は風痺、寒痺、湿痺、熱痺、着痺に分類されます。
また、寒痺と寒阻経絡、湿痺と湿阻経絡は同義語です。

解説

治療は自律神経調節作用や血行促進作用のある補陰・補血薬と、鎮痛、消炎、抗リウマチ作用のある去風湿薬を含む方剤を用います。

対応現代病名(今日的病名)

関節リウマチ・変形性膝関節症・腰痛症・坐骨神経症・多発性神経炎・脊髄炎

病因病機

●痒証とは…筋肉や関節の痛みを特徴とする証候で、風・寒・湿・熱邪が四肢の経脈に阻滞することによって生じます。
痺証は風痺、寒痺、湿痺、熱痺の4種類に分けられます。

 病 症


分析
●風痺…遊走性の痛み。
●寒痺…劇痛。冷えると増悪し、暖めると軽減する。
●湿痺…固定性の痛み。重だるさを伴う。
●熱痺…熱痛。関節部が赤く腫れる。

治法…補虚宣痺

 使用方剤

【本弁証対応使用方剤一覧】

摘要方剤

効果・使用方法

独活寄生湯

からだが虚弱で、腰や手足の痛みが頑固で治りにくい方に使用します。

三痺湯

大防風湯

風湿痺の場合に使用します。

二朮湯

湿痺(重くしびれを呈する関節炎)の場合に使用します。

麻杏薏甘湯

風湿痺の場合に使用します。

葛根加朮附湯

寒痺(痛痺)の場合に使用します。

薏苡仁湯

寒痺の場合に使用します。

●リンクのある方剤は、その詳細内容のページへリンクできます。

自然 ●自分の力だけで生きている人は一人もいません。空気、水、太陽、地球、動植物のお陰で生きていることができます。
●人は大自然の偉大な力により生きているのです。従って、病気の時も大自然の薬(漢方薬)を用いることが重要と考えます。
●大自然に対して感謝の気持ちを持って生活する事が大切だと思います。それによって、喜びや笑いが増え、心が健康になり、身体の健康へとつながっていきます。


 養生法

食養医食同源。次の食材を利用して下さい。
薬膳食材 »



 治療特徴

中医師 漢方・中医学(Traditional Chinese Medicine)における治療の特徴は、「病気そのものにこだわらず、体質の改善によって健康に導く」ことと、 「自然の生薬(herb) »を処方した漢方薬を使う」ことです。
生体における「気=エネルギー(energy)的なもの・肉体の機能や働き」、「血=血液(blood)」、「津液=体内水分」の3要素が身体をバランス良く循環することが大切だと考えます。
人間の健康は、これら「気」(陽)「血・津液」(陰)の調和(harmony)のもとに保たれています。「血・津液」は、原動力となる「気」のもとで初めて活性化され、全身を循環して五臓六腑に栄養を供給します。 この陰陽(positive and negative principles)が調和(陰平陽秘)していれば、健康でいられますが、陰陽のバランスが崩れると、さまざまな病気が起きてくるのです。
黄帝:三皇五帝時代。夏王朝の始祖。宮廷医師、岐伯との問答形式で記された古典的医学書「内経 »素問」の著者です。日本ではユンケル「ユンケル黄帝液」などと商品名に利用されています。

 証判定

判定

証(症状・体質)判定を望む方判定の方右矢印 証の判定メニュー画面へ » ※この判定のために、AI(人工知能)のエキスパート・システムを構築しました。Java

 病 因

病気のしくみ

病気はどうして起こるのでしょうか?(中医学の病因)

異常が起こす病気のメカニズムは、次の4つに大別されます。

1.陰陽失調

…正常な状態での陰陽(positive and negative principles)は、互いに影響しあいながら平衡状態を維持 していることになります。しかし平衡状態が乱れて、どちらかが増長としたり減退すれば病気の引 き金となり、これが「陰陽失調」に当たります。
【論治】陰または陽の補充を行う漢方薬を使用します。具体的には八綱分類で対応します。

2.邪正盛衰

…邪とは病気を引き起こそうとする「病邪」、正は病邪から体を守 る「正気」のことで、病邪の力が正気を上回って病気になってしまうのが「邪正盛衰」です。たと えば、ウイルスを病邪、体の抵抗力を正気と考えればいいのです。ただ、結果的に邪が正を打ち 負かして発症するといっても、その過程は病邪・正気自体の強さによる2つのパターンに分けられ ます。この2つが、東洋医学の診断で重要な「実証か虚証か」という見きわめに直結します。
【論治】病気の直接的な原因となっている「内外の病邪(病因)」を除去する漢方薬を使用します。

3.気血失調

…血は気から作られ、その血は気に変化することもあるように、気 血は車の両輪のように密接に連動しながら人体の生理を支えています。「気血失調」とは、どちら か一方の乱れがもう一方に深刻な影響を与えて病気が起きることをいいます。
【論治】体内に流通する気・血・水(津液)・精の疎通あるいは補充を行う漢方薬を使用します。

4.臓腑経絡の失調

…五臓六腑の活動はそれぞれの臓器の気が行っています。こ の臓器中の気や血の不足から発症するのが臓腑の失調です。また、経絡は気と血の一部の運行経路 ですから、その機能が失調すると気血の流れに異常が起こって病気につながります。
【論治】五臓六腑の機能を調整する漢方薬を使用します。

普通は、これらの4つのメカニズムの働きを1~3種類の漢方製剤で対応できることが多いです。しかしながら、成人病・難病は内・ 外の病因が複雑化し、五臓六腑の機能失調の状況や、体内を流通する気・血・津液・精の盈虚通滞(量的に過剰か不足 か、流通が過剰が停滞かなど)における病理現象が煩雑化しているため、4種類以上の漢方製剤を使用する場合もあります。

張仲景

人張仲景

:150年~219年頃?南陽郡(河南省)の人です。後漢の霊帝時代に活躍しました。医方の祖と人々から尊敬され『傷寒雑病論』を作りました。 生薬を組み合わせて処方し、病態に対応する治療書です。『傷寒論』と『金匱要略』があり、湯液療法の規範となっています。



葉天士

人葉天士

:1667年~1746年 中国江蘇省蘇州の人です。清の時代に活躍しました。衛気営血弁証を弁証綱領とすることを提唱し、温病学の考え方の基礎を作った人です。 弟子や後代の人々の手を経てまとめられた彼の治療技術は、『温熱論』『臨証指南医案』『葉氏医案 存真』『葉氏医案』として、現代に伝えられています。



 治 則

治則とは、2300年以上に渡る臨床の積み重ねの結果、確立された治療手順 の原則です。
治則には2つの原則があります。

1.病を治するには必ず本を求む(治病求本)

病(やまい)には、かならず症状と症状をつくりだす本質とがあります。そこで、 症状をといい、本質をといいます 。「病を治するには必ず本を求む」とは、病気を治すためには、必ず病気の本質となるものを探らなければならない、という意味です。
私達は、ある疾患に対し、八綱弁証、気血津液弁証、臓腑弁証などの弁証方法を用いて、証を求めることを学びました。 たとえば、血虚による便秘を例に取ると、便秘をおこす本質となる血虚証を改善することに重 点を置かなければなりません。血虚証が改善されれば、血のもつ滋潤作用で、腸壁が潤い、便がスムーズに流れ、 便秘はおのずから消失します。
このように病気の本質を突き止めることが「病を治するには必ず本を求む」の本意です。
病気の本質を見きわめた後、それを除去する手順(治則)として以下の5つの手順が用意されています。

(1)扶正

病気が正気の不足で起こる虚証のときは、正気を補う扶正が治則となります。正気とは、体を維持するために不可欠なもので、 具体的には気、血、津液、精および各臓臆、経絡の働きをいいます。気、血、津液、精の不足およびに各臓脇、 経絡の機能低下を総称して正気不足といいます。
治則は正気を補う方法が取られます。補気、補血、生津、益精などがこれに相当します。

(2)祛邪

病気が邪気によっておこる実証のときは、邪気を取りのぞく祛邪が治則となります。邪気とは、六淫の邪、 内生の五邪およびに体内の病理産物である水湿、痰飲、瘀血などをさします。
邪気が病因なので、邪気を取りのぞかなければならないのです。これを祛邪といいます。 散寒、清熱、祛湿、活血などがこれに相当します。

(3)攻補兼施

正気不足と邪気の停滞とが同時におこる状態に用いる治則です。
たとえば脾の運化作用の低下が長びき、同時に津液の運化が損なわれて痰飲が生じている場合には、健脾と 祛痰(扶正と祛邪)を同時におこなわなければなりません。

(4)急な症状は先に治す「急なれば標を治す」

緊急の症状のときには、早急に症状の改善をはからなければなりません。
たとえば脾の不統血による大量の出血では、まず止血をすみやかにおこない(標を治します)、その後、 脾の統血機能を回復させる升補脾気、益気摂血にしたがい治療します(本質を治します)。

(5)表証と裏証が併存するときは表証を先に治す「先表後裏」

表証と裏証が同時に存在する場合は、裏証の存在を考慮しながらも、表証を先に治療します。
日頃から気虚があるものが、風寒の邪で表をおかされた場合は、急いで表にある風寒の邪を取りのぞく 疏散風寒(祛邪)をおこないます。その後、気虚を補う補気(扶正)の治療を取る。ただし、気虚の程 度が甚だしいときには、疏散風寒(祛邪)と同時に補気(扶正)をおこなうこともあります(攻補兼施)。

中国女性

2.地域(region)、時節(season)、人(individual)により治療が異なる

地域性、季節性、個人差を重視し、これに適する治療をおこなうことを大原則とします。

(1)地域性(region)

地域が異なると、温度や湿度などが違い、さらには生活習慣や食生活も異なります。この地域性の違いは、 人体に多大な影響を与えることになります。治療を行う場合は、地域性の違いや、それから考えられる体質の 違いを十分考慮しなければなりません。
島国の日本では、湿度が高い(湿邪に犯されやすい)。一方中国では、大部分が内陸型の気候であるため、 乾燥し、湿度が低いです。さらに日本の食生活では、生もの(寿司など)や冷たいもの(清涼飲用水など)をよく好む傾向があります。そのた めに日本人は一般に脾の運化作用が弱いことが多いです。
治療の場合は、脾の運化作用を活発にさせる配慮が必要です。また近年は、住居の密閉性(マンションなど)が高くなり、 冷暖房設備(エアコンなど)が充実しているため、夏に風寒の邪に犯されたり、冬に燥熱の邪に犯されたりすることもしば しばみられます。
また、日本に於いては、都会の自動車による大気汚染や食物の農薬汚染など環境汚染が甚だしい問題になっています。 この問題についての中医学の対応も非常に重要な課題となります。
そのため同様の「証」に対しても、中国の治療がそのまま、日本で適応するとは限りません。

(2)季節性(season)

日本の四季は、春・夏・秋・冬の区別がはっきりしています。季節の移り変わりに応じて、人体も少なからず変化します。 そこで、季節の変化は、治療にあたり、考慮しなければならないひとつになります。
たとえば、冬と夏とでは、同じ風寒の邪によるカゼでも、少し違い があります。冬は、寒さで汗孔が閉じていることが多いです。そのため風寒の邪 を取りのぞくには汗孔を開き、発汗に力点をおかなければなりません。
一方、夏の場合は、暑さで自然に汗孔が開いている状態にあります。たとえ風寒の邪が侵入しても、 汗孔を軽く閉じる程度です。従って軽度の発汗力をもつ薬物が配合されたもので十分です。 このとき、冬期と同様に強力な発汗力をもつものを用いれば、汗孔が開きすぎ、汗が ダラダラと止まらなくなり、風寒の邪が取り除かれると同時に気や津液が消耗し、 感冒は治癒しましたが気虚や津液不足に陥るはめになってしまいます。

(3)個人差(individual)

人はそれぞれ父母から受け継いだ先天の素因(先天の精)が違い、さらには母体内の環境や栄養状態も異なります。 ましてや、生後から現在にいたるまでの生活環境、仕事の環境、人間関係などはまったくといって いいほど違います。そのため、ひとりひとりの人間が同じ体質をもつことなど有り得ません。
また、ひとりの人間の一生をみても、成長の過程により、体質が変化します。女性の例では、 妊娠出産時の体質の変化は無論として、毎月の排卵、月経のたびごとに微妙に体質が変化します。 以上のことでわかるように、個人差は治療の場合、必ず考慮すべきものです。

ハル薬局
区切り

中医学(漢方)は中国(China)で生まれ、発展した体系医学です。その起源(origin)は遠く2千3百年以上も前に遡ります。そして、日本にも古く(5世紀)に中国から朝鮮半島を経て伝わり、日本独自の発展をしました。

自然(nature)との調和(harmony)を求め、自然に学ぶ。自然を活かし、人(human being)を活かす。自然の恵み(mercy)。

五行説

五行:万物(all things)が木(tree)・火(fire)・土(earth)・金(metal)・水(water)の5つの要素で構成され、自然界の現象はこれらの運動や変化によって説明できるとした世界観です。リンク陰陽五行説(positive and negative,five classification theory) »