真武湯の症例・治例

効果この症例に近い病症の方は、この方剤を用いることをお奨めします。

事例蘆溝橋・欄干(獅子の彫刻)●真武湯(しんぶとう)  新陳代謝機能の衰退により四肢や腰部が冷え、疲労倦怠感が著しく尿量減少して下痢(泄瀉)し易く動悸やめまいを伴うもの。胃腸虚弱症・慢性腸カタル・慢性腎炎!


1〈小陰病期の感冒性下痢〉

67歳、女性。
3日前にくしゃみと鼻水があり、市販の感冒薬を服用したところ、一時好転した。しかし昨夕より再び咽痛と下痢が出現したために来院した。来院時の検温では37.4℃であったが、本人は熱感を訴えず、むしろ背すじが寒いという。顔面はわずかに紅潮している。全身倦怠感がつよく、食欲も低下している。脈は沈、細、弱。腹力は軟弱で胃部振水音を認め、グル音が大進している。下痢は消化便で、泥状便、回数は昨夕2回、本日は明け方に1回、来院前に1回。下痢に伴って肛門の灼熱感やしぶり腹はない。
そこで真武湯を投与した。帰宅後、本方を服用し就床したところ、体温が徐々に上がり、30分程で寒気が去り、気分が良くなって寝入った。2時間ほどして目が覚めたところ、少しく汗ばんでおり、身体の倦怠感も去り、下痢も治まり、翌朝には通常便となり、諸病状は消失した。

2〈過敏性大腸症候群〉

15歳男子。
2ヶ月前より下痢がつづき、いろいろと医師の手当てを受けたが、一時はよくなっても、2〜3目するとすぐ下痢となる。大便は水様のこともあり、粘液のまじることもある。ときどき腹がゴロゴロと鳴る。食欲はある。熱はない。足が冷えてのぼせる。脈は沈細弱、口渇はない。腹痛は訴えない。膀上で動悸が元進している。ひどくやせている。
真武湯を与える。これで下痢は止まる傾向をたどりながらも、一進一退をつづけ、完全に止まらなかったが、昭和15年の1月14日より、5月18日までの投薬によって全治し、体重は8キロ増し、すこぶる元気となった。

3〈不調の原因、胃下垂を漢方薬で治療〉

大学生のAさん(18歳)は、子どものころから胃腸が弱く、常に手足が冷たく、よく下痢をして学校も休みがちでした。
下痢になったときだけ、市販の薬を服用していましたが、胃腸の不快感は解消せず、おなかは張ったままです。
心配した母親に連れられて病院に行くと、かなり重い胃下垂と診断され、真武湯を処方されました。服用を始めて半月ほど経つと、強い冷えが取れ、食欲も出てきました。1ヵ月を過ぎるころからつらい症状もほとんど消え、学校を休むこともなくなりました。

4〈人付き合いが楽しくなって人生観も変わった〉

47歳の女性、Mさんは、専業主婦です。
月経が止まって数ヵ月が過ぎていました。自覚症状としては、めまいがする、夜眠れない、食欲がない、やる気が起こらないなどがありました。2ヵ月後にはピアノのリサイタルが控えており「こんな状態ではうまく演奏ができない」と頭を悩ませていたのです。
そこで、近所の婦人科病院を訪れて相談したところ、めまいが主訴ということから、真武湯と当帰芍薬散が処方されました。
飲み始めて1ヵ月が過ぎたころから、体が徐々に温まってきて、夜ぐっすり眠れるようになりました。食欲も回復し、体も動くようになったそうです。ピアノの練習にも精が出るようになり、無事リサイタル公演も済ませました。今までイライラしていた気持ちがうそのようで、人付き合いが楽しくなり、「友人がこれまでよりも優しくなった」といって喜んでいたそうです。

5〈数年采の耳鳴りが異なった漢方薬の併用で治った〉

45歳のS子さんは、セミが鳴くような耳鳴りに4年間にわたって悩まされていました。
耳鼻科に通院していましたが、症状が一向によくならないので、漢方薬を扱う病院を訪れました。
体カがなく手足が冷えているS子さんには、真武湯と当帰芍薬散が処方されました。朝に真武湯、昼に当帰芍薬散を飲むようにすると、3ヵ月で耳鳴りの音が小さくなり、1年を過ぎたころには全く気にならなくなりました。

6〈数年采の耳鳴りが異なった漢方薬の併用で治った〉

また、W代さん(67歳)は3年前から両耳の耳鳴りに悩まされていました。
W代さんの耳鳴りは、左右で音が違う上に音がかなり大きく、日常生活に支障を来たすほどでした。W代さんには、朝に真武湯、昼に柴胡桂枝湯、夜には釣藤散が処方されました。
これを服用するようになって4ヵ月後には、音が気にならなくなっていました。さらに6ヵ月後には、日常生活に全く支障のない程度にまで軽減されたのです。現在は予防のために、同じ処方を飲み続けています。

唐太宗・李世民 朱雀